【悪質タックル】“フィールド上の犯罪”が問われる事態に

2018年05月22日 12時00分

被害選手の父親である奥野市議が会見した

 泥沼化している日大アメフットの反則問題が深刻さを増した。アメリカンフットボールの定期戦での悪質な反則行為で関西学院大の選手を負傷させた日大の選手が、22日午後に都内で記者会見。関係者によると、選手は内田正人前監督(62=19日付で辞任届受理)とコーチの指示に従って危険なタックルをしたと説明する予定で、指示を認めていない日大や内田前監督の主張と大きく食い違う形になる。21日には被害選手の父親が警察に被害届を出したことを明らかにしており、“フィールド上の犯罪”が問われる事態に発展した。

 会見場所に設定されたのは、W杯を直前にしてサッカー日本代表監督を解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏が先月末、メディアを前に胸中をぶちまけた都内の日本記者クラブ。日大選手が一部員として会見するなら大学の施設などを使用するところだが、あえて違う場所を選んだことは、アメリカンフットボール部および日大とは一線を画そうとする姿勢がうかがえる。

 関係者によると、この選手は内田前監督とコーチの指示に従って危険なタックルをしたと説明する予定。これまでの説明で日大広報部は、前監督は学内の調査に「違反をしろと言っていない」と述べたとしており、主張は食い違っている。日大は15日付の関学大への回答書で「指導と選手の受け取り方にかい離が起きたことが問題の本質」と説明し、詳細な経緯等は24日をめどに再回答する。

 渦中のアメフット部は21日、選手がポジションごとにミーティングを行った。ある現役部員は、内田前監督に反則を指示したことを認めてほしいかと報道陣に問われ「皆さん、選手の気持ちは分かっているでしょう」と話し、うなずいた。別の部員は試合や練習もままならない状況に「選手である以上はつらい」と率直に語った。

 被害を受けた関学大側ではこの日、悪質タックルで腰などを負傷した選手の父親である大阪市議の奥野康俊氏(52)が記者会見し、大阪府警池田署に被害届を提出したことを明らかにした。問題は“事件”の様相を帯びてきた。

 内田前監督が「すべて私の責任」と語った19日の会見について、奥野氏は「真実を語っておられるのか。チームがしたことの責任を監督が取る。ただそれだけとしか聞こえなかった」。真相究明には程遠い内容に、被害届の提出を決断。被害届は被害選手と奥野氏、夫人の3人で提出。加害選手のみを対象としているという。

 加害選手には「彼が一人であれをしたのなら許せないが、何かの力が働いているという話があるので、真相究明していただきたい」との思いを述べ、「自分の息子と同じくらい将来がある」と気遣いもみせた。

 刑法は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と204条で傷害罪を定めている。一方、同35条では「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」。医師が患者の体にメスを入れたり、スポーツ選手が相手の体に衝撃を加えたりするのは35条による「正当業務」とみなされ、刑事罰に問われない。

 ただ、「殺人タックル」とも言われる今回のケースでは内田前監督とコーチから「相手のQBを壊してこい」との趣旨の指示があったとの証言も伝えられる。「壊せ」は「けがをさせろ」を意味するともいい、事実なら「正当業務」を意図的に逸脱した犯罪の遂行が成り立つ可能性もある。

 さらに、奥野氏が「何かの力が働いているという話もある」と言うように、内田前監督らの関与が認められれば、“共謀共同正犯”に問われる余地もあり得る。

 日大教職員組合などは21日、理事長、学長に人事一新などを求め、都内の日大人事部に声明文を提出した。菊地香執行委員長(52)は「今後こういうことが起きないようにぜひ、改善していただきたい」と要望。ただ、加害選手については「私からすると被害者。多感な時期に巻き込まれてしまって本人からすれば不本意。今後、自分がやってしまったことを帳消しにするぐらいの社会貢献をやってほしい」と擁護の姿勢を明確にし、内田前監督の関与をほのめかしていた。