アメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦(6日)で、日大の守備選手が悪質なタックルで相手選手にケガを負わせた問題で17日、関学大が2度目の会見を開いた。鳥内秀晃監督(59)は日大・内田正人監督(62)が意図的な乱暴行為を選手に指示したことを否定する日大の回答に疑念と不満を表明した。日大側は内田監督らが関学大に出向き謝罪する方針を明らかにしたが、真相究明に不可欠な説明責任を果たしていない内田監督への風当たりは強まるばかり。この裏側では日大側の“事情”も取りざたされている。

 関学大が日大に求めた悪質タックルについてのチーム見解は「指導者による指導と選手の受け取り方に乖離が起きていたことが問題の本質と認識している」とし、監督の言葉を過度に受け取った選手に責任があると言わんばかりのものだった。

 指導者としてあるまじき対応に、鳥内監督は怒りを隠せない。「(内田監督は)自分の厳しさが選手と乖離していると思うのであれば、あのプレーの時にベンチで言わなかったのか。次の日なりに責任者が、選手、保護者に直接謝罪するべき。同じ指導者として到底受け入れられないし、真相究明を求める。日大でも地位のある役職におられるので、記者会見を開いてはっきり説明してもらいたい」と厳しく糾弾。「あの監督の下で、コーチの皆さんは意見が言えない可能性がある。それで学生たちを守れるのか」と内田監督の“独裁”に苦言を呈した。

 もはや社会問題にまで発展した悪質タックル問題。鳥内監督が言うように、反則行為を指示したとの関係者証言も出ている内田監督が公の場で説明しない限り、問題解決につながらないことは誰もが分かっているはず。ではなぜ内田監督、さらに日大側は速やかに実行できないのか?

「内田氏を守ろうとしているんでしょう。内田氏は大学の実質ナンバー2で『次期理事長候補最右翼』とも言われているんです。結局、裏目に出ていますけどね」と話すのは日大関係者だ。

 内田監督は日大のドンで相撲部総監督の田中英寿理事長(71)に目をかけられ、常務理事で人事部長という現在の地位に上り詰めた。今回の“不祥事”で経歴に傷がつかないために配慮し、逃げ切ろうとしているならスポーツマンシップのかけらもない。

 さらに別の関係者は「あの人(内田監督)は人前で話すのが下手なんですよ。大学も、会見を開いたら何を話すか分からないという怖さもあるのでは」と推測する。事態収拾を図ろうとして開いた会見によって、逆に傷口が広がる可能性もあるという。

 前代未聞の反則行為については本紙既報通り、絶大な権力を持つ内田監督に周囲が意見できないことを問題視する声は多い。日大アメフット部に詳しい関係者は「コーチも内田氏の息がかかっていて、ダメな人もいる」と指摘。内田氏が2015年にいったん監督を退いた後、16年に助監督から監督に就任した高橋宏明氏は「本当に熱心に指導し、誠実」(同関係者)と、評価が高かった。しかし昨年、わずか1年で内田氏が監督に復帰というなんとも不可解な事態が起こっている。時を同じくして選手側からも大量の退部者が出た。“内田独裁体制”が終わらず、復活したことで最悪の展開になったようだ。

 内田監督の今後はどうなるのか。「たとえ責任をとり監督を辞任したとしても、本業は大学人事を一手に掌握する人事部長。大学での役職が残ればチームや体育会への影響力だって結局変わらないのでは」(日大関係者)と悪質タックル問題の“闇”はどこまでも深い。24日をめどとした日大の再回答を待たず、内田監督自らが誠意ある対応を行うのか。動向が注視されている。