【麻美ゆま連載6】現実と向き合えず旅に出ることに…

2014年11月22日 12時00分

現実逃避の旅では誰とも話さなかった

【麻美ゆま「HAPPY&SMILE」:連載6】4月の恵比寿マスカッツ解散ライブに立つという目標があったので、手術後はとにかくリハビリが必要でした。おなかは30センチほど切っているし、痛いものは痛い。ちょっとした動きで傷痕に響くし、せきやくしゃみをしたら、体が身震いするほど痛い。最初は歩くのもままならなかったですね。

 しばらくすると病院にいるほかの患者さんとも仲良くなって、一緒にご飯を食べるようになりました。お互いに傷痕を見せ合ったりして、励まされました。出身が同じ群馬の75歳になるおばあちゃんとも親しくなって、いろいろ話を聞いたんですよ。ピンピンしているけど、毎年1回、再発して抗がん剤治療をしているそうで。75歳のおばあちゃんがこんなに元気なんだから、26歳の私がくじけちゃいけないなって前向きな気持ちにさせてくれる人でした。

 入院生活はこうして乗り越えられた私ですが、退院したことで現実に引き戻されてしまい、現実逃避もしました。改めて考えると、自分は本当に変わってしまったんだなあって。マスカッツのライブを目標にしていたけど、ほかのメンバーはツアーで各地を回っている。私だけが取り残されていたし、これから始まる抗がん剤治療のことを考えると、もっと私自身が変わってしまう。

 現実と向き合えなくなって、死にたいじゃないけど、このまま現実から逃れたい、消えたいとか思ってしまったんです。誰にも会いたくないし、誰とも話したくない。とにかく帰りたくない。だから、どこか旅に出ることにしたんです。

 まずは上野から盛岡に行きました。何の目的もなく行くのもどうかなって思ったんで、名物の冷麺を食べるという目標を作ったんです。で、盛岡に無事着いて、冷麺を食べたんですよ。でも、あんまりおいしいとか、そういう気分にはなれなくて…。本当に食べたかったわけじゃないし、ただ食べるっていう目的のためだけだったし…。

 冷麺を食べても帰りたい気持ちにならなかったんです。次はどうしようかなって考えて、そのまま北海道に行くことにしたんです。旭川市に行って旭山動物園に行きました。このときの心境は本当に深刻で、常に「死」という言葉が隣り合わせでした。逃れたい。消えたい。できなかったんですけどね。

 心ここにあらずという状態でも、頭の中には抗がん剤治療のことがありました。結局、治療の打ち合わせをする前日に東京に戻りました。

 旅に出るとき、母には「そのうち帰るから」と言っていました。本当は帰らないつもりではあったけど「帰らない」というと心配するじゃないですか。帰るときに母に電話したら「あと1日遅かったら捜索願出すところだった」って言ってて。

 覚悟を決めて3月21日から抗がん剤治療を始めました。これはマスカッツの解散ライブを意識してのスケジュールなんです。