【前園連載1】飛躍のきっかけは転校してきた美少女

2014年04月21日 12時00分

小学生時代の前園(最前列)は女の子の気をひくためにサッカーにのめりこんだ
前園真聖「流浪の天才ドリブラー」(1)

 私は鹿児島県東郷町(現薩摩川内市)で生まれた。山と田んぼしかないのどかな田舎町だった。サッカーと出会ったのは4歳の時のこと。4つ年上の兄がサッカーをしていた影響を受け、駄々をこねて母にボールを買ってもらったのがきっかけだ。ここからサッカーのとりこになっていった。

 本格的に取り組んだのは小学2年生のころからだ。兄が所属していた地元の強豪クラブ「東郷少年サッカー団」の練習に行く際に同行し、グラウンドの片隅で一人ボールを蹴っていた。入団できるのは4年生からなのだが、試合では勝手にベンチに座っていた。今思えば、かなりずうずうしかったなあ。

 そんなある日、クラブの諏訪監督が「ちょっとボールを蹴ってみろ」と言うので、ずっと練習してきたドリブルで年上の選手たちを軽々と抜き去り、誰にもボールを奪われなかった。すると諏訪監督は「誰も真聖を止められないんだから文句はないだろう」と2年生ながら特例で入団を認めてくれた。ちょっと同級生の目は気になったけど、サッカーができる喜びでいっぱいだった。

 普段からデコボコな山道でボールを蹴っていたため、自然とテクニックとバランス感覚が身についた。いま考えれば幼少期の環境がプロサッカー選手になる原点だったのだろう。でも、自分が大きく飛躍するためのきっかけとなったのは小学3年生の時のある出来事だ。

 クラスに一人の女の子が転校してきたのだ。彼女は都会的に洗練された雰囲気の美少女だった。とにかく気になる存在で、正直に言えば一目ぼれだった。同級生にも「あの子のことが好きなんだろ?」とからかわれるほど、わかりやすかったみたいだ。もちろん「そんなわけないだろ」と否定したけど、実際はかなり意識していたし、初恋と言えるんじゃないかな。

 だから学校でサッカーするときも、彼女がグラウンド脇で見ているとわかると、意識して近くまで行って、ドリブルで相手を抜いたり、トリッキーなフェイントを使ったり…。少しでもいいところを見せようと、かなり頑張ったね。そのおかげで難しいテクニックも身についたんじゃないかな。

 自分でも「ませていたな」とは思うけど、男なら誰でも好きな女子にカッコいいところを見せたいと考えるものでしょう? 確かに動機は不純だったけど、普段の練習にも熱が入った。しばらくすると、私は東郷少年サッカー団でも存在感を示せるようになった。