40代の「社内失業」急増

2012年06月27日 12時00分

<40代の「社内失業」急増①>

 まずは、1つのストーリーを用意したのでお読みいただきたい。もしかしたら「俺も似たような状況だ」とドキッとする人がいるかもしれない。いや、少なからずいるはずだ。「異動したら仕事がなかった…」。これは今、日本の企業で増えている〝社内失業〟の何とも切ない実態である。

 日に日に暑くなるこの時期、スーツの上着を肩にかけ、汗だくで外回りをしていたことを思い出しながら、細田さん(仮名=44)は今日もクーラーの効いた社内でハガキにスタンプを押している。宛先をチェックしながら、ゆっくりと、たっぷり時間をかけて。早々に終わらせたらやることがないからだ。

 20年間、バリバリの営業マンとして働いてきた。しかし、この春突然、異動の通達を受ける。会社の業績悪化を受け、2つあった営業部を1つにする〝スリム化〟の影響だ。以前、上司にたてついたことがあった細田さんは削減対象となり、企画部に異動となった。

 全く違う仕事だったが、家庭もある。心機一転頑張ろうと思った。4月の1週目に早速、業績を上げるための新企画書を提出。しかし、部長は大して中身も見ずにダメ出しをしてきた。それが何度も続いたうえ、ほかの部員に「俺は何をやればいい?」と聞いても「ちょっと忙しいので…」「営業とは勝手が違いますから…」とやんわり拒否される。企画部自体も人が減らされ、みな手一杯。新メンバーに一から仕事を教えるようなゆとりはない。

 次第にやることがない事実に気付き始めた細田さんは他部署の人間に「手伝おうか?」とお伺いを立てたが、迷惑そうな顔をされた。しかも、すぐに部長に呼ばれ「そんなに仕事がないならこれをやれ」と、雑用を命じられるようになった。

 いらなくなった書類の整理、郵便物の手配、なぜか取締役のお弁当の注文まで…。雑用開始3日後、部長に相談したが「私も忙しいんだ」と相手にしてもらえない。周囲からは「給料ドロボーだな」という声が聞こえてくる。

「違うんだ! 頑張るつもりはあるんだ!」

 悔しい。でも、何をやればいいのか分からない。不毛な日々が続き、ゴールデンウイークが明けた今、細田さんの心は完全に折れかけている。昨日は郵送する封筒をチェックしているうちに、そのうちの1通が隣駅にある会社宛てだと分かり、ふらりと会社を出た。
「歩いて届けよう」

 往復1時間半、上着のスーツは脱がなかった。急いでいないから、汗もかかなかった…。

※②に続く(社員のヤル気を生かせない会社