釜ヶ崎の人々が集う〝癒やしカフェ〟

2012年06月30日 12時00分

【大スポDNA】大阪市西成区釜ヶ崎。あいりん地区とも呼ばれ、労働者向けのドヤ街、寄せ場がひしめき合う、大阪の中でも最もディープな地域だ。そんな中で、近辺の労働者や路上生活者、はたまた若者たちが日ごと集まり、語り合う奇妙なカフェがあるという。本紙はその一風変わったカフェを訪れ、その全容に迫った。
(6月14日発行 大阪スポーツ)

 大阪市営地下鉄動物園前駅から動物園前一番街へ。うらぶれた商店街の奥へと進むと、あたりの雰囲気とは一線を画す、ド派手な外観の店が姿を現した。釜ヶ崎の人々が集うカフェ、ココルームだ。

 恐る恐る扉を開けてみる。カウンターの奥に四畳半ほどの座敷があり、そこで数人の男たちが集会らしきものを開いていた。「五月病 落ち込む僕に 五月雨が…」。どうやら、全員で俳句を詠み合っているようだ。

 平日の昼間から大の男たちが俳句とは。ココルームのオーナー・上田假奈代(かなよ=顔写真)さん(42)に話を聞いた。

「ココルームはアートNPOが運営するカフェ。地域の人たちが結び付くような場所作りを目指していて、店内でいろんなイベントを行ってるんです。お客さんの7割は地元のおっちゃんたち。お客さんの中には労働者、ホームレス、ニートの若者などいろんな方がいますよ」

 ココルームには毎日通ってくる常連さんも多く、地元のおっちゃんたちの憩いの場となっているのだそうな。俳句会以外にもカルタ作り、工作や習字など様々なイベントをほぼ毎日行なっている。もちろん、カフェとしてコーヒーや軽食も楽しめる。

「このあたりのおっちゃんたちは生きがいがなく、お酒やギャンブルに走る人が多い。このお店が居場所となり、少しでも生きやすくなってくれればいいなと思ってます」(上田さん)

 全国各地から仕事を求めて釜ヶ崎にやって来る男たちは、壮絶な過去を持つ者も多い。ココルームでも「戸籍がない」「野宿で暮らしてきた」「幼少のころ人さらいに遭って育てられ、実の両親を知らない」などという身の上話は珍しくない。

 そうしたワケアリの人たちが多いゆえか、店では普通のカフェでは考えられないようなトラブルも。感情の起伏が激しい人が多く、お客さん同士の喧嘩はしょっちゅう。店のお金を盗まれるなどの警察沙汰も日常茶飯事だという。上田さんも、客から「ホームレスなったことないやろ!」と罵倒されたり、風邪を引いて声が出ないだけで「態度が悪い」と殴られたことまであるそうだ。

 そこまでしてココルームを続ける理由とは何なのか。

「このあたりに住む人たちの中には、手帳も持たず制度が助けてくれない人も多い。少しでも地域が支えていかないと。いろんな人にとって、生きていくことが幸せになってもらえるようになってほしいんです」(上田さん)

 ココルームの常連でホームレスのAさんは、支払いもせずトラブルばかり起こす人物だった。しかし次第に店で心を開くようになり、イベントで素晴らしい絵を描くようになったとか。また、みんなで手紙を書くイベントでは、ひらがなが書けなかったおっちゃんが見よう見まねで上田さんへの手紙を書き上げたことも。

「お客さんは日雇い労働者、ホームレスなど社会的にしんどい立場の人が多いですが、そういう人たちのちらっと垣間見える優しさや気遣いに励まされたり、学ばされることも多いんです。お客さんのいろんな話を聞いてると、『人ってすごいよね』と感動することもありますね」(上田さん)

 ココルームは、釜ヶ崎のおっちゃんたちの心の止まり木のような場所なのだ。

☆インフォショップ・カフェ「ココルーム」=地下鉄動物園前駅から徒歩3分。不定休。営業時間は正午から夕方まで。