「スローライフ」の理想と現実

2013年07月20日 11時00分

 老後は田舎でのんびりと暮らしたい――。そんな思いを抱いている中高年は少なくないだろう。ただ現実の田舎暮らしは決して良いことばかりではない。空気がきれいで水がうまくても、耐え切れなくなってしまった人はたくさんいる。

 3年前まで都内で自営業を営んでいた高井さん(仮名=70)は、妻に先立たれていたこともあり、会社を畳むと同時に生まれ故郷の岐阜県へ移住することを決めた。10代で東京に出てきたので半世紀ぶりの凱旋だったが、現地で暮らす妹夫婦の勧めもあって庭付きの一戸建てを購入。当初は生活に何の不満もなかったという。

 ところが、想像していた以上に地域に溶け込めなかった。

「まあ、とにかく外で飲んでいる人が少なくて面白くない。最初は近所の(といっても3キロくらいある)小料理屋に顔を出してたけど、雪が降ったら帰るのが大変だから、そんなに頻繁に行けない。だから、だんだん外に出るのが面倒になっちゃって、家で酒飲みながらCSの時代劇チャンネルばっかり見てた。友達は田んぼで鳴いてるカエルくらいだよ」

 結局、高井さんは1年半で家を売り払い、東京に舞い戻ってきた。

「遠くの親戚より近くの他人ってことわざは本当なんだな」と苦笑いだ。

 定年退職をきっかけに夫婦で長野県に移住した菊池さん(仮名=67)はまず、妻との関係がぎくしゃくした。

「最初は家内も田舎の生活を楽しんでいたのですが、不便さに耐えかねて週末は都内の息子の家に出掛けるようになって、別居状態。電車代もバカにならないのでたしなめたのですが、『(テレビの放送局が少ないので)いつも見てた韓流ドラマが見られないじゃないの。○○ちゃん(息子)に録画してもらってるんだから』って。これには私もあきれました」

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