「マニュアル」は引き継げる〝奥義書〟

2012年06月05日 12時00分

【マニュアル否定は大損(1)】

「マニュアル人間」と聞いて良いイメージを持つ人はいないだろう。だが、マニュアルとは単なる取扱説明書ではない。そして、仕事ができない人間だけが読むものでもない。マニュアルとは、先輩から後輩へと引き継ぐべき財産が集約された究極の〝奥義書〟。今こそマニュアルに対する偏見を一掃しよう!

「いらっしゃいませ!」「ハンバーガーを5つとチーズバーガーを5つください」「かしこまりました。こちらでお召し上がりですか、お持ち帰りですか?」

 こう聞き返されたら誰だって「えっ? 1人で食べきれるわけがないだろ」とイラつくに違いない。そして、「最近の若いやつはマニュアル通りの接客しかできないからダメなんだ…」とマニュアルを否定してしまうはずだ。

「確かに最近の若い人は学生時代のアルバイト先でマニュアルに触れ、就職活動でもマニュアル本を読み込むなど、あらゆる場面でマニュアル依存に陥っている傾向があります。しかし、逆に中高年の方は『マニュアル=悪』というマニュアル排他主義に陥っており、こちらの方が大きな問題だと思います」

 こう話すのは、マニュアル作成活用事業を手がける株式会社クオーレの代表取締役・工藤正彦氏だ。実際、マニュアルを作ることを嫌っている中高年は多く、結果としてそれが悪影響を及ぼす場合は少なくないという。例えば…。

「営業成績が優秀だったA先輩が定年退職を迎えたので後任をB君に任せたんだけど、どうも取引先の担当者が気の難しい人で、どう対応したらいいのか分からないと悩んでいる」(40代・営業)

「人事部長だったC君が他社に引き抜かれて以来、ウチの新入社員はどうも面白みに欠ける人間ばかり。できれば彼のノウハウを少しでも残しておいてほしかった」(50代・管理職)

 ここまで読んで「極端でしょ」「ウチは大丈夫」と思った人もいるはず。「いくらなんでも前任者や先輩が多少なりともノウハウを教えるはずだよ」と言いたくなる人もいるだろう。

「そうでしょうね。でも、自分たちがノウハウだと思っていることが、苦労話や思い出話で終わっているケースが多いんです。それではもったいない。後輩社員が使いたいときに使えるような形、すなわちマニュアル化することで、属人化されたノウハウを会社として伝承することが大事なのです」

 団塊世代が職場から去りつつある今、彼らの持っている知識をマニュアルとして引き継ぐことは会社にとって大きな財産になるのだ。

※続く