学校法人「森友学園」をめぐる決裁文書改ざん問題で、キーマンとされる佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が27日、衆参両院で行われた。同学園に対する国有地の格安売却について、佐川氏は安倍晋三首相と昭恵夫人の関与を否定し、交渉の経緯や自身の具体的な関与に関する質問には「刑事訴追を受ける恐れ」を理由に答弁拒否を連発。一方で自らが“犠牲”になることでこの先は安泰との見方もある。巨額の退職金、将来的な天下りは既定路線で、バラ色のセカンドライフが待っている!?

「捜査の対象であり、刑事訴追を受ける恐れがあるため、答弁を差し控えさせていただきたい」との言葉を約50回繰り返した佐川氏。一連の改ざん問題の焦点は「いつ、誰が、なぜ、どのようにして」財務省理財局が決裁文書を書き換えたのかにあった。だが、大方の予想通り核心部分についての答弁を拒否した姿勢に、共産党の小池晃氏が「これでは証人喚問の意味がない。これで進めるわけにはいかない!」と声を荒らげ、審議が一時中断する場面もあった。

 一方で、自民党・丸川珠代氏の「安倍総理からの指示はありませんでしたね?」「安倍総理夫人からの指示もありませんでしたね?」という問いには「ございません」と明快に回答。「ありませんでした“か”」ではなく「“ね”」で尋ねた丸川氏の誘導尋問ギリギリの質問は、政府・与党にはファインプレーに映ったに違いない。

 しかも佐川氏の補佐人を務めたのは、ヤメ検の熊田彰英弁護士。小渕優子元経済産業相の政治資金規正法違反事件(本人不起訴)や、甘利明元経済再生担当相のあっせん利得処罰法違反事件(同)で両氏側の弁護を担当した人物だ。

「自民党の御用弁護士。彼を補佐人にした時点で、政府・与党が佐川氏を“囲った”も同然だ」とは政界関係者。結果的にこの日の喚問は核心については事実上のゼロ回答で佐川氏が野党を完封した形。佐川氏が“男”になるのを期待した人もいたが「ザ・官僚」である同氏にそれを求めるのは酷だったようだ。
 気になるのは佐川氏の今後。泥を1人でかぶったことで、ゆくゆくはバラ色のセカンドライフが待っているという。

 まずは官僚の定番、天下り。一昨年、総務省事務次官を退官した「嵐」の櫻井翔の父・俊氏のように、民間企業の役員に登用されるケースも多い。

 千葉大名誉教授(行政学)の新藤宗幸氏は「佐川氏もほとぼりが冷めれば、天下りするでしょうね。財務省の外郭団体は総務省より多いですから。在職中から目星をつけている人もいるほど。刑事訴追された場合でも、いずれ再就職すると思います。(天下りの)順番が変わるというだけですよ」と推察する。

 お次は退職金だ。この日「無職」と答えた佐川氏だが、退職金は満額で4999万円。ただし、麻生太郎財務大臣から一連の混乱を招いた責任者として減給処分を受けているので、実際の支給額は減給分66万円を引いた4933万円になる。

 国家公務員退職手当法によれば、在職中の行為で逮捕された場合などは退職金の支払いを一時的に凍結することが可能。佐川氏は現在この状態に該当する可能性もあるとみられ、今後刑事訴追を受け、禁錮以上の刑が確定したり、懲戒免職に相当する行為が認められれば、退職金をゼロにすることもできるが…。

 前出の新藤氏は「退職金がゼロになることはあり得ません。そんなことをやれば『佐川1人に押し付けて』と安倍政権の支持率はさらに下がりますからね。多少の減額は免れないにしても、落としどころはすでに見つけていると思いますよ」。

 加えて、佐川氏の東京・世田谷区内の住まいは敷地面積約180平方メートルの豪邸。1997年に周辺の土地とともに競売にかけられ、東京国税局に差し押さえられていた場所を、佐川氏が2003年に不動産会社を通じて相場より安く購入したという。何やらきなくささも漂うが法的に問題はなし。土地と建物の価値は1億円は下らないとみられる。

 退職金をガッポリもらい、ゆくゆくは再就職し、休日は1億円豪邸で優雅に暮らす――。これが日本の現実なのかもしれない。