国外逃亡中のインラック・タイ前首相(50)の日本“潜伏”が報じられ、騒ぎになっている。タイのプラウィット副首相(72)が地元最大手紙に明かしたもので、兄のタクシン元首相(68)と行動を共にしているとみられる。「日本に亡命か」との未確認情報も流れているが追跡してみると、国外逃亡というには程遠い優雅な日本滞在をしているという。どういうことなのか。

 共同通信は関係者らの情報として、インラック氏とタクシン氏は13日に日本を出国し、香港に向かった。私的な訪問で10日に日本を訪れ、東京に滞在した。入国は日本政府が特別に許可。インラック氏は英国に亡命申請中だという。

 インラック氏は兄同様、反タクシン派勢力によるクーデターで政権を追い落とされた。しかも、兄妹揃って汚職の嫌疑をかけられ、裁判で有罪となり、兄は2008年から、妹は昨年から国外逃亡中。だが「政治闘争の一環で、不当な裁判」と見る向きもあり、そんな批判をかわすため、現軍事政権は兄妹を刑務所には入れず、国外逃亡の機会を与え、見て見ぬふりをすることで、落としどころとしたといわれる。

 インラック氏は、兄が拠点にしているドバイや英国を行き来していたとされるが、昨年10月、軍事政権は同氏のパスポートを無効にしたという。では、どんな手段で海外を渡り歩いているのか。

 タイの政情に詳しい記者は「兄のタクシンもパスポートを無効にされ、懇意だった英国からもビザを取り消されたが、財力と政治力にモノをいわせ、モンテネグロ、ニカラグア、ウガンダと3つのパスポートを取得したとされる。“親友”フン・セン首相のカンボジアからのバックアップもあるのでは? インラックも、今はドバイを拠点にしている兄と合流し、同様に他国のパスポートを取得した可能性がある」

 インラック氏は今年初め、ロンドンでタイ人観光客との記念撮影に応じたり、先日も中国・北京で撮ったとされる写真をタイメディアに報じられたりと、緊張感はない。北京を経て、兄妹で来日したようだ。

「中華系のすご腕ビジネスマンのタクシンの素顔は寂しんぼう。国を追われたことより、家族が離れ離れになったことを周囲に嘆いていたと報じられている。仲良く育った妹と一緒にいられることが今はうれしいのでは」と前出記者。

 国外逃亡後の11年8月、タクシン氏は東日本大震災の支援や、日本に住むタクシン派タイ人との会合のため来日。当時の民主党政権は同氏に超法規的措置としてビザを発給した。その後も何度かひそかに来日しているとされるが、現自民・公明政権は、タイの政争には関わらない方針で、入国拒否はしていないという。

 タクシン氏は昨年末、北海道ニセコにいたことが分かっている。高級リゾートホテルのような広々とした部屋で長女夫妻、次女、孫とだんらん、自ら日本風カレーを作る姿が、次女のフェイスブックに投稿された。その場にインラック氏もいた可能性もある。

「バンコク―千歳の直行便は常に混み合うほど、タイ人は温泉や雪景色を堪能できるから北海道が大好き。タイ人は『さっぽろ雪まつり』の『国際雪像コンクール』の常連で、今年も優勝をさらった。それが今月4~8日にやってたから、一部のタイ人は『タクシン・インラック兄妹は雪像コンクールを見に行ったのでは!?』と噂している」と旅行会社勤務のタイ人。

 兄妹の日本亡命説も一部でささやかれているが、大手メディアの元バンコク支局長いわく「彼らは好きなように海外に出入国しているから、亡命する必要はない。もともと政治的な陰謀で訴追された兄妹だから、日本政府は一切関与しないし、関知しない」。

 優雅な家族旅行の可能性が高いが、滞在先の一つとして日本を気に入ったかも。