衆院厚生労働委員会で12日、予定になかった介護保険関連法改正案が強行採決された。民進党が改正案と関係がない森友学園問題を質疑で取り上げたことに、与党が猛反発したためだ。ルール違反の質疑をして国会を混乱させたのは、目立ちたがりと札つきの“絶叫マン”柚木道義衆院議員(44)。与党内からは「また柚木か。もうレッドカード!!」と大ブーイングが飛んでいる。

 厚労委では、今国会で重要法案の一つである介護保険に関する法案審議が行われていた。この日は安倍晋三首相(62)も出席してのヤマ場だったが、柚木氏は冒頭、NHKの世論調査を持ち出し「国有地払い下げを巡る政府の説明に国民の約8割は納得していない」と切り出した。

 安倍首相は「この問題については再三再四、答弁している」と答えたが、柚木氏は森友関連の質問を続行。丹羽秀樹厚労委員長(44)から「質疑は議題の範囲内で」と何度も注意されたが、「安倍首相、ひと言!」と食い下がったため、委員会は紛糾。与党は「事前通告外の質問で信頼関係が崩れた」として、14日に予定していた採決を前倒し、この日、自民、公明、維新の賛成多数で強行採決した。

 すると民進党は再び反発し、山井和則国対委員長(55)は「国会運営を壊した。共謀罪の審議入りは現時点では応じられない」と14日に趣旨説明が予定されている共謀罪法案に揺さぶりをかけた。

 自民党関係者は「なんでもかんでも質問していいのは原則、予算委のみです。議題外の質問がある場合は、事前の理事会で取り決める約束だが、民進党はそれを破ったわけです。さらに柚木氏は厚労委で野党側の筆頭理事の立場。“またか”というしかありませんよ」とあきれる。

 柚木氏といえば永田町では“熱血・絶叫キャラ”で知られる。2008年に民主党が「ガソリン値上げ阻止隊」を結成し、国会内ですったもんだを繰り広げた際、柚木氏は着ていたスーツがビリビリに引き裂かれたとして「スーツは破れても、民意は破れない!」とアピールし、一躍、顔を売った。

 また昨年11月の年金カット法案を巡る審議では「今日も朝から医務室ですよ。38度以上、熱も今あります。解熱剤を飲んでいます。嘔吐、下痢止めを飲んで来ています。昨日は点滴を打ってきました」と“満身創痍”を訴えたかと思えば、喉の調子を与党からヤジられ「何が“声をからして”ですか!? 私のポケットの中にはいつもドロップがありますよ。声をからして、本気でやっているんですよ!!」と絶叫。

 もっとも永田町では「体調不良なら欠席すべきで、マスクもしないで、ウイルスが蔓延したらどうするんだ」と大ひんしゅくを買った。また国会質疑ではたびたび不許可のプラカードを持ち出し、物議を醸した。

 今回の森友質問も民進党が追及に弱腰との世論に反発し、質問を買って出たようだが、“柚木アレルギー”の強い与党側は過剰反応してしまったとも。ルール破りの質問に怒り、不意打ちの前倒し強行採決で報復では、相手のワナにはまってしまったともいえそう。自民党の竹下亘国対委員長(70)も渋々、山井氏に陳謝するしかなかった。14日に同改正案に関する新たな審議が行われる方向だ。