親友の占い師に機密文書などを漏えいし国政介入させた疑いで韓国国会で弾劾訴追され職務停止中だった朴槿恵大統領(65)は10日、憲法裁判所から罷免を言い渡され失職した。

 職務停止中も北朝鮮による金正男氏暗殺、新型弾道ミサイル発射など朝鮮半島を揺るがす“有事”続きだったが、朴氏の退陣は、各国の対北朝鮮政策にどんな影響を及ぼすのだろうか。

 拓殖大学客員研究員で元韓国国防省分析官の高永チョル氏は「4月は11日に金正恩氏の第1書記就任5周年、15日に金日成氏の生誕105周年、25日には朝鮮人民軍創設85周年とイベント続きで、これに合わせ核実験やミサイル発射など軍事挑発してくることも考えられる」と指摘する。

 くしくも、4月末まで予定されている米韓合同軍事演習は史上最大規模で行われ、米軍の高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」も早ければ今月末に配備が完了する。北朝鮮が示威行為を続ければ、軍事施設や核施設をピンポイント攻撃、特殊部隊を投入して局地戦をいつでも展開できる状態だ。

 60日以内に行われる次期大統領選の立候補予定者は、潘基文前国連事務総長(72)が出馬を断念したため、親北派だらけの顔ぶれが予想されている。最有力の「共に民主党」の文在寅氏(64)は盧武鉉政権の秘書室長時代、国連の北朝鮮人権決議案への賛否を北朝鮮にお伺いを立てた親北派で知られる。

 高氏は「米国は、北朝鮮の軍事挑発があった場合、韓国で左派大統領が誕生する前に反撃することも当然、選択肢の一つには入れているだろう」と指摘する。

 北朝鮮の後ろ盾となっている中国は、米国と北朝鮮に争いの矛を収めるよう主張している。米国は中国の反応も気になるが「暗殺された正男氏の長男、ハンソル氏がマカオからインドネシア経由で米国に入っていることから、亡命に中国との協力関係があったことは間違いない」(高氏)

 早ければ今月にも朝鮮半島が火の海に包まれるか――。