2ちゃん元管理人送検 警視庁2つの狙い

2012年12月22日 11時00分

 巨大掲示板「2ちゃんねる」の元管理人西村博之氏(36)が20日、麻薬特例法違反のほう助罪で警視庁に書類送検された件がインターネット上で騒がれている。「警察はそんなに2ちゃんが気に食わないんだな」「閉鎖したらお前らどこに行くの?」と閉鎖もささやかれるが、専門家は2ちゃんねる関係者初の摘発の目的を「急増するネット犯罪に対する見せしめの側面と、騒動の幕引きという2つの狙いがある」と指摘した。

 

 警視庁サイバー犯罪対策課によると、送検容疑は2ちゃんねるが覚醒剤売買に利用されていると知りながら、西村氏が昨年5月の50代男による書き込みを削除しなかった疑い。男は覚醒剤0・2グラムを1万円で販売することを意味する「02―1万円」と投稿し、麻薬特例法違反で実刑が確定した。

 

 警視庁は問題となった投稿を削除するよう2ちゃんねるに要請したが、削除されず、昨年11月、関連会社を同じくほう助罪容疑で家宅捜索した。実に1年以上にわたる捜査で、2ちゃんねる関係者では初めて摘発(書類送検)にこぎつけた形だが、起訴は困難との見通しが強い。これでは捜査の狙いが分かりにくい。

 

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「まずは見せしめでしょう。ソーシャルゲームなどでも援助交際が行われており、なかには美人局など悪質なものも増えています。それらの運営者に対して『取り締まるか、捜査に協力しないとほう助で挙げるぞ』というメッセージになる。警察沙汰になれば広告が入りづらくなるのでビジネスに影響が出ます。特に目に余る2ちゃんねるだから、意味があるのでしょう」と解説する。

 

 もう一つ政治的な狙いもありそうだ。永田町関係者は「近く政権交代が行われることで公務員人事も動きます。例えば官邸では民主党政権下で“塩漬け”となり、全く動かなかった官僚もいた。彼らが異動すれば霞が関全体も動きます。警察人事にも影響があるでしょう」と指摘する。

 

 警視庁と警察庁は“打倒2ちゃんねる”のため共同歩調を取ってきた。特に片桐裕警察庁長官(61)はネット犯罪対策に力を入れると公言した。この片桐長官も来年度には任期を迎えるとみられている。

 

「人事の事情もあって、1年にわたる長い騒動に幕引きをしようという考えも警察にはあったのではないか。成果が上がっていないという批判をかわすため、起訴が困難でもやらざるを得なかったのでしょう」(井上氏)

 

 残された問題は、警察がどこまで証拠を固めたかだ。西村氏は2ちゃんねるの開設者だが、2009年にシンガポールの「パケットモンスター社」(以下パ社)に譲渡。運営に西村氏は関わっていないということになっていた。

 

 警視庁側は、西村氏が2ちゃんねるの広告収入を得るなど、運営に関与していたと判断。削除要請について、運営幹部からメールで相談を受けたことも確認されたため、実質的に管理する立場にあったとみている。

 

 だが「てっきり西村氏とパ社の間に金の流れやメールのやり取りがあって、それを警察がつかみ『今でも管理人だ』と判断したと思っていました。しかし、起訴は困難らしいですからね」と前出の井上氏。

 

 西村氏は今回の件にコメントを発表していないが、普段から何をしているのか不明なところがあった。「最後に会ったのは今年の4月。海外によく行って変わったお祭りを見学したり、現地のネット関係者と情報交換をしているとのことでした」(同)。ブログではテレビゲームの話題が多い。

 

 2ちゃんねるの閉鎖まではなさそうだが、ネット上の犯罪の抑止効果にはなりそうだ。