来年度予算編成に向けて小池百合子東京都知事(64)が、12日から業界団体のヒアリングをスタートさせた。小池氏は予算案からカットされたものを、政党の要望の形で復活させていた「復活予算」という慣例の廃止を明言。都議会自民党の力の源泉と指摘されていた。これを受けて知事が直接ヒアリングすることになったのだが、業界団体側は女帝の新手法にビビりまくっている。

 これまで政党が行っていた業界団体からの要望聞き取りを知事自ら実施するのは異例のこと。6日間で60団体と面会し、すべてインターネット中継される。都議会自民党の影響力をそぐという強い意志を持つ小池知事は「東京大改革の表れだと理解してほしい」と訴えた。

 この日は私立学校や公衆浴場、鍍金(メッキ)業界など8団体の要望を聞き取った。たった15分の会合の良しあしで、予算が増減するかもしれない。業界団体側にとってはプレッシャーだ。

 ある団体代表は「小池百合子知事様に我々の声を直接、お届けできる機会をありがとうございます」と必要以上に恐縮していた。別の団体代表は都幹部に「最後に何か言いたいことは?」と聞かれ「来年1月に新年会があるので、ご多忙は承知していますがご都合があれば」と場違いにもかかわらず小池氏を誘った。

 それだけ女帝と距離を縮めておきたい思いが強い。

 五輪会場見直し問題など小池氏にはコストカッターのイメージがついている。業界団体が予算を減らされるのではないか?とビビるのは仕方がない。
 しかも業界団体らには苦い経験があるという。

 ある業界団体の代表は「1999年に石原慎太郎氏が都知事選に出馬したとき、私どもは自民党党本部が推した明石康氏を応援しました。問題は石原氏が当選したあとのことです。あいさつに行くと、『お前ら、俺を応援しなかったよな』と要望は一切聞いてもらえなかった。その後、関係を修復するのに苦労しましたよ」と振り返った。

 復活予算の習慣があったときは、業界団体の話を聞いた各政党が要望を出していた。政党の中心は都議会自民党だ。つまり、多くの団体が都議会自民党と距離が近い。小池氏と都議会自民党が対立した先の都知事選では増田寛也氏(64)の応援に回った団体も少なくはない。

「今回は増田氏を応援しました。増田氏の会合で『ガンバロー!』と拳を上げているところがニュースにも使われてしまったので、当然、小池氏はそれを知っている。一体、小池氏がどう出てくるか予想もつかない」(前出の団体代表)と意趣返しを警戒している。

 ヒアリングで小池氏は「ただ予算を増やすのではなく、努力も必要」と要望をそのまま聞くわけではないことを示唆した。業界団体らは小池氏の胸中を測りかねている。