小池百合子東京都知事(64)が主宰する政経塾「希望の塾」が10月30日、都内で開塾した。約2900人が参加する盛況の一方、都知事選で自民党都連の意向に反して小池氏を支援した区議ら“7人の侍”の間に微妙な隙間風が吹いているという。この日が都連による離党勧告の期限だったが、7人は離党届の不提出を選択。都連は結論を先送りしたが、筋論なら除名が濃厚だ。どんな展開になるにしても小池氏はこの7人と一体になって行動していくことになるが、一枚岩が崩れかねない要素もある。

 小池塾は、さながら“小池教”のようだった。4827人の応募があり、書類選考などを経て参加したのは2902人。4回に分けて開塾式を行うほど盛況だった。小池氏は、あいさつで「歴史上には松下村塾など、いろんな塾があった。インタラクティブに学び合いながら、一人ひとりが批評家ではなくプレーヤーとして参加してもらえるようにしたい」と積極性を求めた。

「東京は、ありとあらゆるものがあるが、一つ足りないものがある。それは希望。みんなで希望を見つけて、実現しましょう」と呼びかけた。式後、参加者らは「オーラがありました」「動いている小池知事を見て感動しました」と感想を話し、小池氏への心酔ぶりをうかがわせた。

 このように熱烈な塾生がいれば、小池新党など新たな展開になったときに心強いはず。都政関係者は「小池塾には、さまざまな人が集まりました。北海道から沖縄まで、お年寄りから高校生までいる。現役のキャバクラ嬢やお坊さん、元地方議員や現役議員でも様子を見に来た人もいたようです」。アイドルグループ「仮面女子」のメンバーで東大卒の桜雪(23)、芸人のエド・はるみ(52)の姿もあった。

“信者”だけではない。小池氏にとって今後の政治活動をする際に中核になるのが、地元の豊島と練馬の両区議、通称7人の侍だ。都知事選から若狭勝衆院議員(59)の東京10区補選まで、都連と対立しながらも小池氏に寄り添っていた。彼らには都連から離党勧告が出されており、30日に期限を迎えた。
 この日、侍の一人は「離党届は出しません。7人で決めました」と、きっぱり語った。自民党に所属しながら党の離党勧告を無視したとなれば、除名は確実だ。もちろん、しょせんは自民党内部の規定なので、さまざまな思惑により処分されないこともありうる。

 永田町関係者は「もし小池新党を本気で考えているなら、自民党から除名されたほうが大義が立つ。もっとも、党本部からすると避けたい事態なので、どうなるか見通せない」と指摘した。

 7人の一致結束が重要だが、必ずしも一枚岩ではない。豊島区議の河原弘明氏(60)の政務活動費を巡る金銭スキャンダルの影響だ。自身が役員を務める印刷会社に政務活動費で党会報誌の印刷を発注した疑いが浮上している。

 別の侍は「河原氏は目立っていたので狙われた。もちろん私たちの動きに影響はあると思います。しかし、基本的には河原氏が個人で説明することでしょう。7人の侍とは別の問題だと考えています」と突き放す。

 クリーンさが命ともいえる小池氏にとって、足元のスキャンダルは無視できない。都連の下村博文会長(62)は「7人の意見を聞いてから判断したい」と離党勧告の期限を延期し、処分の先送りを同日夜に決めたが、河原氏だけは自ら離党などの選択をすることも考えられる。となると「一貫して歩調を合わせる」(前出の別の侍)はずが、分断されてしまう。

 開塾式がすべて終わった後、7人は報道陣をまくように裏口から脱出した。真の侍と呼ばれるためには、そろそろ覚悟を決める時なのかもしれない。