終盤戦を迎えた米大統領選(11月8日投開票)で、山場となるテレビ討論会の第1回が26日(日本時間27日)に行われ、共和党のドナルド・トランプ氏(70)と民主党のヒラリー・クリントン氏(68)が激しい舌戦を繰り広げた。視聴者の評価も含めて劣勢に立たされたトランプ氏に逆転の秘策はあるのか?

 赤のパンツスーツのヒラリー氏に対し、青のネクタイを着用したトランプ氏と、両者とも党のイメージカラーとは正反対の格好で意表を突いたが、肝心の討論の中身はヒラリー氏が終始、優勢を保った。CNNテレビの視聴者評価でも、クリントン氏が勝者との回答が62%、トランプ氏は27%だった。
 決定的だったのは、トランプ氏の納税申告書問題だ。大統領選候補者は慣例で納税申告書を公開し、クリーンであることをアピールするが、トランプ氏は徹底的に拒否し続けている。

 討論会でもこの問題を突っ込まれたトランプ氏は、クリントン氏が公務で私用メールアドレスを使用した件を持ち出し「(クリントン氏の)3万3000件のメールを開示するなら、私も納税書を見せる」と突き返したが、クリントン氏は「話のすり替えだ。よほど隠したい事情があるのか」とピシャリ。トランプ氏は、ぐうの音も出なかった。

「トランプ氏は(運営する)カジノが破産した際、負債を踏み倒した疑惑や従業員への給与未払いなどで訴訟を抱えている。ほかにも億万長者と言いながら、実際は収入が少ないともいわれ、納税申告書を公開しないのは、そのあたりが明るみに出るのを恐れている」(米事情通)

 一方、この問題は半年以上前から指摘され、トランプ氏が“逆転の切り札”に温存しているとの見方もある。

「クリントン氏は依然として健康問題を抱え、残りわずかでも、また弱みを見せれば、トランプ氏はまだ逆転できるとみている。その際、納税申告書を公開し、やましいことがないのを逆手に取って、攻勢をかけるのでは」(同)

 約1億人が視聴した大舞台で“トランプ節”を封じていたともいえ、あえて負け戦を演じてみせたのか? テレビ討論会は来月9、19日にも行われる。