北朝鮮が脱中国をもくろんでミサイルをブッ放した狙い

2016年09月07日 07時00分

 新たな冷戦が始まる!? 防衛省は北朝鮮が5日発射した弾道ミサイル3発について、いずれも約1000キロ飛行し、北海道・奥尻島の西沖約200~250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとの分析を明らかにした。韓国軍によると、日本のほぼ全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程1300キロ)とみられる。中国がホスト国として杭州での20か国・地域(G20)首脳会合を行った中、北朝鮮が脱中国をもくろんでミサイルをブッ放した裏には、とんでもない狙いがあるという。

 防衛省によると、北朝鮮は日本時間の5日午後0時13分ごろ、黄海側に位置する南西部・黄州付近から東北東方向に3発を発射した。

 日本の喉元までミサイルが飛んできたわけだが、民進党国会議員は「Jアラート(全国瞬時警報システム)は作動しなかった」と指摘する。

 Jアラートは武力攻撃など対処に急を要する情報を国から地方自治体、各自治体から住民に防災無線やスマホのメールなどで知らせるもの。通常、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本に飛んできた場合、日本海に落ちるのか、その手前や上空を通過する際に作動する仕組みになっている。

「Jアラートが、どれくらいの距離で作動するのか。安倍内閣は『安全保障上、答えられない』とした。朝鮮半島の西側から発射された場合、半島の山を越えるため、最初の兆候や覚知は、米国と韓国のレーダーや衛星に頼らざるを得ないのが現状ではあるが…。安倍内閣が、北朝鮮に対して打つ手が見えてこない」(同党国会議員)

 一方、G20で習近平国家主席(63)は朴槿恵大統領(64)に面と向かって韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD=米軍の最新鋭迎撃システム)配備計画について不快感を表した。韓国のTHAAD配備はひとえに北朝鮮の核の脅威の顕在化によるもの。習氏の朴氏に対する“叱責”は北朝鮮にとっても援護射撃になるはずだった。そんな習氏の面目を丸潰れにしたのが今回のミサイル発射だ。

 北朝鮮の全貌に迫った本「北朝鮮発!『世界核戦争』の危機」を構成するなど朝鮮半島事情に詳しい但馬オサム氏はこう指摘する。

「北朝鮮がミサイル等で恫喝行為を行うとき、そのアピール先はアメリカです。アメリカと二国間協議ができれば、中国も日本も韓国もどうでもいいというのが金正恩労働党委員長の本音でしょう。アメリカと交渉し、核放棄の見返りとして平和協定を結び、アメリカの圧力でもって日本に(2002年の)平壌宣言を履行させ、数兆円単位のカネをむしり取る。それが北朝鮮の最終目標です」

 現に正恩氏は政権を握って以降、中国寄りの張成沢元国防副委員長を粛清するなど、中国離れを明確にしている。

「中国は北朝鮮のそんな不遜な態度に苦り切りながらも、戦略的な意味から北朝鮮を手放せずにいる。金正恩はそれらを見越しての強気の態度です。北朝鮮はアメリカとの平和協定へ向けての協議が始まれば、韓国なんてどうにでもなると思っている」と但馬氏。

 昨年4月の総選挙で韓国の与党セヌリ党は惨敗。野党の「共に民主党」は従北派を多く抱えている。その意味でも北朝鮮は安心していられるというわけだ。

「韓国のTHAAD配備で中国の国内のミサイルシステムは無力になります。となれば、北朝鮮は南シナ海へといよいよ触手を伸ばしてくるでしょう。南シナ海に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した潜水艦を潜ませ、アメリカ本土に照準を合わせるのです。東シナ海では浅過ぎて、すぐ発見されてしまう。だから南シナ海なのです」(同)

 また韓国では一部だが、またぞろ核武装論も上がっている。

「韓国の核武装は、北朝鮮のそれよりも日本にとっては脅威となります。北は政治戦略的に核を脅しの道具に使っていますが、韓国は発作的に何をやるかわからない国だからです。いずれにしても現状は、東アジアを中心点とした複雑な新冷戦構造の始まりです。北朝鮮、中国、アメリカ、韓国。やがて機を見てロシアもコミットしてくるでしょう」

 北朝鮮は中国離れし、SLBMで脅しつつ米国に近づく。米国としては日韓米で仲良くし、中国、北朝鮮、ロシアをけん制したいが、韓国が米中の間で揺れ動いている。中国はロシアと蜜月になりつつある。

 好むと好まざるとにかかわらず、日本もすでにこのプレーヤーの一員なのだ。