中国が申請した「南京大虐殺」に関する資料が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に“まんまと”登録されてしまった。完全に不意を突いた形で、日本政府は猛反発。対抗措置としてユネスコへの分担金の停止をチラつかせているが、後の祭りだ。中国事情に詳しい評論家の石平氏は「これこそが中国の手法。日本は平和ボケしている」と述べた上で、まさにいま日本が国際社会から“試されている”と断言した。

「完全にハメられたね」と語るのは石平氏だ。事実関係をめぐり日中間で火花を散らしていた「南京大虐殺」が、両国の合意も見ぬままユネスコの記憶遺産に登録されてしまった。

 そもそも「南京大虐殺」というワード自体、眉唾だ。1937年12月に日本軍が支那事変を終結させるため、南京を占領。中国政府は約6週間にわたり数十万人単位の人間(市民や捕虜)が日本軍によって虐殺されたと主張しているが、犠牲者の数は当初43万人ともいわれ、10万人、さらには20万人や30万人と変化しており、反日教育に利用している感が強い。

 むしろ大規模虐殺の決定的な証拠は存在せず、南京戦の最中には民間人のための非攻撃地域「安全区」が設けられていた。

 そんななかで起きた中国主導のユネスコ登録。安倍晋三首相(61)は14日、中国の外交担当トップの楊潔チ国務委員(65=副首相級)と官邸で会談し、世界記憶遺産に登録申請したことに遺憾の意を伝えた。楊氏は「歴史をしっかり認め、未来に向かって進んでいくことが重要だ」と反論。政府はユネスコへの拠出金停止・削減など対抗措置の検討に入っているが、中国外務省は「脅迫する言動で、驚きを禁じ得ない」としている。

 これに石平氏は「歴史認識の一致も見ぬままの登録で、ユネスコの公平性は完全に失われた」としながらも「これを通してしまうのが中国。日本は平和ボケしていた」と話す。

 ユネスコのイリナ・ボコバ事務局長は元ブルガリア共産党員で、9月3日に北京で行われた「抗日戦勝記念軍事パレード」にも出席するなど、中国と親しい間柄にある。

 また審査機関「アジア太平洋地域世界記憶遺産委員会」の10人のうち、中国人は4人、韓国人は1人で日本人はゼロ。中国と韓国が協調体制を敷いていることは言うまでもない。

 菅義偉官房長官(66)は13日の会見で「どういう過程で申請文書が提出されたのかアクセスできない」と現行制度にダメ出ししたが、後の祭りだ。

 石平氏は「中国は何年も前から根回しし、準備している。“密使”が将来の有力者に近付き、相手の欲しいモノを事前リサーチし、それを与えることで取り込んでいく。それがお金かどうか今回は分からないが、少なくとも日本はこうした“寝業”ができないし、危機感が薄い」と力説する。

 大事なのは、日本政府の今後の対応。

 同氏は「今回は決して折れてはならない。あらゆる方策を講じ、徹底抗戦すべき。最終的に中国との話し合いになるかもしれないが、戦わずして交渉するのと、モメてから交渉するのでは、大違い。足元を見られますから」と話す。

 中国は「南京大虐殺」がユネスコという国際機関からのお墨付きをもらったことで、国際社会に声高にアピールし、今後の対日外交でも効果的なカードとして使用してくるだろう。

「それを日本が指をくわえて見てようものなら、国際社会から完全にナメられる。ただでさえ、日本は中国に多額の政府開発援助(ODA)を渡している。『日本を脅せば金になる』『モメても最後は金をくれる』と思われるだろう」(同)

 自民党内では、中国への対抗措置として「天安門事件をユネスコ申請するべき」という意見が出ているというが、果たして――。