「年金情報流出」発表遅れの真相

2015年06月17日 06時00分

 隠蔽していたのか。15日、日本年金機構から個人情報が流出したことが1日に発表されて以来、初めての年金が支給された。機構や厚労省の説明不足や遅々として進まない被害対応に野党は怒り心頭。民主党関係者が「菅官房長官は『年金は漏れていない』というが、漏れてるんだ」と追及モードを強めれば、別の野党関係者は「15日に新しい情報が出てきた。これは隠蔽という大スキャンダルになる」と息巻いた。

 15日は4月分と5月分の年金が振り込まれた。今回は政府による給付抑制の仕組み「マクロ経済スライド」実施後、初の支給。昨年度より支給額は0・9%増えたが、物価や賃金の伸び率には届かず、実質的には目減りした。

 年金は原則、物価か賃金に連動して支給額を改定するが、少子高齢化でも年金財政が成り立つよう、2004年に物価か賃金より年1%程度低く抑えるマクロ経済スライドを導入。今年4月分から初めて実施された。

 受給者になりすます人物が現れる可能性もあり、機構は注意を呼びかけている。混乱が続く年金情報流出問題で野党は活気づく。

 この日、民主党の「漏れた年金情報調査対策本部会議」は会合を開き、厚労省や機構の担当者を呼んでヒアリング。蓮舫本部長(47)と山井和則事務局長(53)を除けば、4人の国会議員しか参加しないというお寒い状況だったが、議員らの追及に厚労省担当者らは「答えられない」を連発。頼りなさを露呈した。

 すでに年金詐欺が起きている。1日に神奈川県の70代女性に機構をかたる電話があり、「あなたの情報が流出している」と話したという。信用してしまった女性はキャッシュカードを自宅に来た男に渡してしまい、300万円を引き出されてしまった。

 当然、民主党議員から補償の話が出たが、厚労省と機構の担当者は「個々の事例による。法律の専門家の意見を聞いて対応することになる」と木で鼻をくくったような対応に終始した。この補償の元手が問題だ。玉木雄一郎衆院議員(46)が「国庫負担は軽々しく扱えない。となると保険料になる」と会合で指摘したように、保険料で補償することになりかねないのだ。

 民主党関係者は「菅(義偉)官房長官は『漏れた年金は誤解。年金そのものは漏れていない』と会見で話していました。しかし保険料で補償するなら、事実上、年金が漏れていると言えるじゃないか」と憤る。

 隠蔽疑惑も浮上している。この日、厚労省と機構は「日本年金機構不正アクセス事案の経緯」という文書を公表。4日にも同名の文書を出しているが、新情報が付け加えられた。別の野党関係者は「最初の文書には一切出てこなかった情参室(厚労省政策統括官付情報政策担当参事官室)が関与していたと書いてある。この部署はマイナンバーを扱っていた」と指摘する。

 5月8日に内閣サイバーセキュリティセンターが不正アクセスを検知し、情参室に通報していたという。4日の文書では情参室は伏せられていた。


 国民に割り当てる個人番号の適用範囲を広げるマイナンバー法改正案は5月21日に衆院通過。しかし、1日の年金情報流出の公表を受けて、参議院では採決が先送りされている。「情参室を隠したのはなぜか。マイナンバーの採決に影響が出ないことを優先して、対応が遅れたのではないか。これは大スキャンダルになる」と前出の野党関係者は追及に意気込む。

 厚労省と機構のずさんな対応で損をするのは国民だ。