シリア取材の意向を表明したことで、外務省にパスポートの返納を命令された新潟在住のフリーカメラマン杉本祐一氏(58)が12日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で記者会見を行った。杉本氏は「私のことがあしき先例になり、ほかの報道関係者に及ぶかもしれない」と主張。返納命令の取り消しを求める訴訟も検討しているとした。

 杉本氏は27日にトルコを目指して出発し、陸路でシリア入りを計画。次なる人質事件になることを恐れた外務省は7日、杉本氏にパスポート返納命令を出し、受け取っていた。返納命令に対する異議申し立てができるが、杉本氏は「弁護士の先生に相談したら、申し立てをしないで訴訟をした方が早いのでは、とアドバイスをもらった」と言う。

 会見で「本当に訴訟をする気があるのか? 売名行為とのそしりもある」と問われると、杉本氏は「今の質問で燃えました。最後までやります」と最高裁に憲法判断を仰ぐまでやると意気込んだ。

 会見に出席したジャーナリストは「『燃えた』という発言は冷静さを欠いていた。これでは『この人の危機管理は大丈夫なのか』と思われてしまう」と指摘。訴訟となれば、杉本氏の危機管理能力も問われる。ここに疑問符がつけば、外務省の命令は間違っていないと判断される。

 裁判費用などは支援者からのカンパになるという。また、政治家へ協力も訴える。誰に頼るかも問題だ。

 政府関係者は「後藤健二さんの母親である石堂順子さんが首相への面会を求めたときに、石堂さんは福島みずほ事務所を頼りました。結局、面会できなかったのですが、もし地元選出の自民党議員を頼っていたら官邸の対応は変わっていたかもしれません」と明かす。

 前出のジャーナリストは「訴訟は難しいのでは」と話しており、パスポートが返還されるかは不透明だ。