麻生太郎副総理兼財務相(73)が25日、TPP交渉の日米合意の先送りを受け「オバマが(TPPを)国内でまとめきれる力はない」と発言。バラク・オバマ米大統領(52)を国賓で迎えているさなかのナンバー2の発言だけに、官邸や外務省は肝を冷やすハメとなった。

 麻生発言が飛び出したのは、25日の閣議後会見の席上。前日に安倍晋三首相(59)とオバマ大統領との間で行われた日米首脳会談でTPP交渉はまとまらず、この日、朝まで交渉は継続されたが、大筋合意に至ることはなかった。

 感想を求められた麻生氏は前述したように「オバマが国内でまとめきれる力は今ないだろう」とバッサリ。11月に米中間選挙を控え、米国内事情を挙げたうえで「(TPPの)協議がまとまったとしても米国の議会で通る保証はない。継続していく話ということ」と指摘した。

 麻生氏の発言は的を射ていた。TPPでオバマ大統領が全権を握っていると思われがちだが、実際には米議会は貿易促進権限を大統領に付与してはいない。「オバマが何か日本と約束しても議会の承認がない限り、合意はないに等しい。その米議会では、身内の民主党からもTPPは反対されている状況です」とは、米市民団体「パブリックシチズン」のロリー・ワラック氏。

 もっとも、正論とはいえ、一報が伝わるや関係者は青ざめた。菅義偉官房長官(65)は麻生発言の議事録全文を取り寄せたうえで「日米ともに極めて難しい政治状況があり、オバマ大統領といえ、選挙も控えている。そういう中で麻生流の説明をしたんだろう。我が国の正式な見解は私が申していることに尽きる」と必死に取り繕った。

 国賓に対し、最後にとんだ赤っ恥をかかせたと勘違いされそうな発言だけに、日米間の今後の禍根となりかねない。