2月の都知事選で敗れた細川護熙氏(76)と小泉純一郎氏(72)の脱原発元首相コンビが、一般社団法人「自然エネルギー推進会議」を来月7日に立ち上げる。脱原発を支持する文化人を結集させ、全国の首長選や統一地方選で、脱原発候補者を支援する母体となる。一方で、脱原発勢力の分裂加速は避けられず票を食い合う「仁義なき戦い~地方戦~」への突入に、自民党がほくそ笑む展開となってきた。

 細川氏と小泉氏は、3位に敗れた都知事選時から自然・再生可能エネルギーの研究や脱原発のシンクタンクの結成を示唆しており、捲土重来を期しての脱原発活動の“再稼働”となる。同法人には歌舞伎俳優の市川猿之助(38)、作家の瀬戸内寂聴氏(91)らが発起人に名を連ね、女優の吉永小百合(69)や俳優の菅原文太(80)らが、賛同人に集まる。

 脱原発の世論を高め、11月に予定される福島県知事選や来年の統一地方選などで脱原発を訴える支持を支援する組織となりそうだ。都知事選でも細川&小泉タッグで、一時はメディアジャックしたように発信力は高く、脱原発を訴える民主党の菅直人元首相(67)や社民党は2人のカムバックを歓迎。地方選でも大きな話題を呼びそうだが、複雑な声も漏れてくる。

 懸念されているのは、都知事選でも禍根を残した一本化問題だ。共産・社民党が推薦した宇都宮健児日弁連前会長(67)と細川氏との一本化が叫ばれたが、両陣営の支援者が互いに誹謗(ひぼう)中傷する醜態をさらした。当選した舛添要一氏(65)が211万票に対し、脱原発を訴えた2人の得票数は計193万票で、一本化していれば逆転の可能性もあったが、見事に共食いした。

「共産党は脱原発を掲げながらも一本化は毛頭なく、選挙も党勢拡大の手段としか考えていなかった。多くの文化人も両候補に股裂きされた。吉永小百合が細川氏支持を表明し、サユリストだった宇都宮氏が“脱サユリスト宣言”までしていました」(脱原発関係者)

 独自候補にこだわる共産党は、今後も元首相コンビと連携する可能性はほぼゼロだ。

 脱原発の急先鋒でもある山本太郎参院議員(39)も小泉氏や他の脱原発勢とは一線を画す。山本氏はイラク戦争を支持した小泉氏にはアレルギーがあり、都知事選でも細川氏の支援を見送った経緯がある。“小泉NG”で共闘の芽はない。

 結局、小泉氏が表舞台に立つことで、脱原発勢は一枚岩どころか現状では“3つの勢力”への分裂を加速させるだけになる。菅義偉官房長官(65)は「政界を引退したお2人が何を行おうとも、いちいちコメントすることでもない」と話したが、漁夫の利を得る自民党は笑いが止まらない。

 かつて自民党をぶっ壊すと宣言した小泉氏が、今度は脱原発勢をぶっ壊し、自民党をアシストする皮肉な構図となってきた。