真冬の首都決戦となった東京都知事選(2月9日投開票)は、舛添要一元厚労相(65)が最新の世論調査で2位候補にダブルスコアをつける独走態勢で選挙戦をスタートさせた。次いで細川護熙元首相(76)、宇都宮健児前日本弁護士連合会会長(67)が、舛添氏を追う展開。細川氏を全面支援する小泉純一郎元首相(72)は、小泉劇場健在とばかりにエキサイトし、小泉政権の生みの親で東京五輪組織委員会会長に就く森喜朗元首相(76)を“公開処刑”してみせた。

 細川元首相を全面支援する小泉元首相が初日からスパートした。細川陣営はこの日、都庁前などの3か所で街頭演説会を開催。いずれも小泉氏が登場し、細川氏の後に「よっ、真打ち!」「待ってました」の掛け声が飛ぶなか、細川氏の倍になる10~15分をかけてマイクを握り続け、どちらが候補者か分からなくなるほどだった。もっとも、話の中身は脱原発のみ。

「都政にはいろいろな問題があるが、防災、医療、雇用は誰が都知事になっても大した違いはない。一番の違いは原発をゼロにするかしないかですよ!」と小泉氏は声を裏返して絶叫。政界引退から4年のブランクを全く感じさせない。

 2005年の郵政選挙同様、敵をハッキリと定める小泉流は変わっていない。都知事選最初の小泉劇場で“公開処刑”されたのは、24日に発足する東京五輪組織委員会の会長に就任する森元首相だった。

 森氏は細川陣営の原発ゼロ政策に対し、18日のテレビ番組で「五輪のためにはもっと電気が必要。ゼロなら五輪を返上するしかなくなる」と激しく非難していた。これに小泉氏は「原発ゼロでの五輪なんて無責任なことを言うなと言う人がいるが、昨年、五輪招致委員会はIOCや世界に向かって『原発ゼロでもできる』と宣伝しているじゃないか。今になって、小泉がおかしいと言うが、どっちがおかしいのか」と反論した。

 20年五輪の開催計画書で東京は、原発の再稼働には直接言及せずに、電力の不安はないとしている。森氏は昨年の五輪招致時に、招致委員会の評議会議長兼副会長の要職に就いており、こうした招致の経緯を知らないワケはない。

 この展開は自民党側も想定済みだった。

「小泉さんは攻撃されれば、逆に意固地になって火をつけるタイプ。森さんは小泉さんに、格好のエサを投げ込んでしまったようなもの。もっとも小泉政権生みの親でもある森さんまで容赦なく攻撃するとは、下克上ですね」(自民党議員秘書)

 自民党が舛添氏を支援する中、小泉氏は議員引退しているとはいえ、党籍があるため細川氏の応援は反党行為にもなる。ただ、「小泉さんを批判しても話題にされ、利用されるだけ」(同秘書)とタブー視されているのだ。

 党内で暗黙のうちに批判が禁じられているのは小泉氏だけではない。息子の進次郎氏(32)も舛添氏と党の対応を公然と批判し、都知事選では応援に立たないと反旗を翻した。

「政務官で党の前青年局長で、組織人としてもあるまじき行為ですが、処分うんぬんの話までは出てこない。進次郎氏を問題視すれば、小泉氏が火をつけるだけ。もし進次郎氏が小泉氏と一緒に細川サイドに立つようなことがあったら、それこそ目も当てられなくなる」(自民党関係者)

 完全にスイッチが入った小泉氏は「原発ゼロはやればできる。自然を資源とした国づくり、社会づくりはやりがいのある仕事。引退して、本を読んだり、歌舞伎を見るより、燃えている」と意気込む。今後も基本的に細川氏とセットで行動し、他陣営をさらに“口撃”するのは明らかだ。

 自民党側は小泉父子の無視を決め込んでいるものの、アリ地獄とも言える小泉劇場に、次なる犠牲者が出てくるのは時間の問題だ。