佐藤優氏「アゼルバイジャンとアルメニア…四角形と三角形の戦い」

2020年10月05日 11時00分

佐藤優氏

【マンデー激論:佐藤優】アゼルバイジャンとアルメニアの関係が緊張している。

 9月27日に旧ソ連のアゼルバイジャンから独立を主張するナゴルノ・カラバフ自治州周辺で、アゼルバイジャン軍と同自治州に駐留する隣国アルメニア軍が激しく衝突し、多数の死傷者を出した。その後も戦闘が続いている。

 アゼルバイジャンに属するナゴルノ・カラバフ自治州はアルメニア系住民が多数を占めている。ソ連時代の1987年に同自治州の住民がアゼルバイジャンからアルメニアへの帰属替えを要求したのをきっかけに深刻な民族抗争が発生し、両国のナショナリズムが高揚した。

 同自治州のアルメニア系住民は、91年12月にソ連が崩壊する過程でアゼルバイジャンからの独立を宣言したため戦闘が本格的し、約3万人とされる犠牲者を出して94年に停戦に合意した。2016年にも再び大規模な軍事衝突が起きた。同州では民族浄化が行われ、アゼルバイジャン系住民は追放され、今日に至っている。

 この問題を理解するためには、政治的な三角形と四角形を押さえておく必要がある。

 四角形とは、アゼルバイジャンは、米国、トルコ、イスラエルの連携だ。カスピ海の石油や漁業資源にも恵まれている。

 これに対して、アルメニアは、ロシア、イランと三角形の友好・協力関係を維持している。アルメニア人の大多数は、アルメニア使徒教会の信者だ。この教会は、独自の歴史と信仰を持っている。カトリック教会(プロテスタント教会はカトリック教会の分派です)、正教会は、451年のカルケドン公会議の決定を認めた。

 これに対してアルメニア使徒教会はこの決定を認めず、別の道を進んだ。アルメニア人のアイデンティティは、この教会と結びついている。アルメニア人は移民が多く、国際的なネットワークを持っている。特に兵器ビジネスでアルメニア人ネットワークは強力だ。アルメニアは資源が少ない国なので、移民による仕送りで本国の経済は成り立っている。トルコがアゼルバイジャン側に立って介入し始めたことで、混乱に拍車をかけている。今後、イランがアルメニア側に立って介入する可能性がある。そうなるとかなり面倒な事態になる。

 今後、調停において、フランスが大きな役割を果たすと思われる。フランスは、アゼルバイジャンとエネルギー、運輸、都市開発などの分野で緊密な協力をしている。

 また、フランスにはアルメニア系の移民が19世紀から多数いるので、アルメニアとの関係も深く、良好だからだ。