次期首相に〝近くて遠い男〟岸田文雄 数々の「持ってない」伝説

2020年09月02日 11時15分

1日の出馬会見場所は〝密っていた〟(ロイター)

 自民党総裁選(8日告示、14日投開票)に出馬する岸田文雄政調会長(63)は“持ってない男”なのか!? 1日、岸田氏と石破茂元幹事長が相次いで記者会見を開き、総裁選への出馬を正式表明した。だが、会見場として広い会場を選んだ石破氏に対して、岸田氏はコロナ禍にもかかわらず「密」を呼ぶ狭い事務所を選択する凡ミス。振り返ってみれば、これまでも岸田氏はやることなすこと裏目に出ることが多かった――。 

 この日、総裁選が8日に告示され、14日に党員・党友投票なしの両院議員総会で投開票されることが正式に決まった。2日に菅義偉官房長官が出馬表明し、三つどもえの戦いの構図に。

 最も早く会見を行ったのは岸田氏だった。

「勝利に向けて同志と努力を始めたい。国民、国家のために私のすべてをかけてこの戦いに臨みたい」と切々と訴えた。さらに「国民の協力を引き出せるリーダーを目指したい」と親しみのあるリーダー像を描いている。

 事実上、首相を選ぶことになる今回の総裁選に向け、岸田氏が出馬表明会見の場所に選んだのは、ビルの一室にある岸田派事務所だった。注目度の高さから報道陣が殺到したが、会場はあまりにも狭く、コロナ禍にもかかわらずギュウギュウ詰め状態になってしまった。

 この光景にはネット民から「こういう脇の甘い人にはトップに立ってほしくない」といらぬ批判を招いてしまっている。

 ライバルの石破氏が広い多目的会議室を会見場にあてたことをみると、選択ミスの感は否めない。

 だが、岸田氏の脇の甘さは今に始まったことではなかった。安倍晋三首相の辞任をめぐってもそうだった。

 先月28日に辞任の一報が流れたとき、岸田氏は都内ではなく、なんと新潟にいた。永田町関係者は「間が悪い。“持ってない感”が強い」と嘆息した。すぐに帰京したが、情報分析能力や危機管理能力に疑問符が付けられても仕方がない。

 得意とするはずの政策面でも失敗があった。新型コロナウイルス対策として、政府が特別給付金10万円の一律給付を決めて国民に配ったのは周知の通り。だが、もともとは自民党内で岸田氏が、減収世帯に限定した30万円案をまとめていたことを覚えている読者も多いだろう。結局、公明党が安倍首相に直訴したことで、10万円の一律給付にひっくり返り、岸田氏は面目丸潰れ。評価を落とした。

 自身の政策を記した著書の出版でもドタバタ劇をみせた。岸田氏は今月、著書「岸田ビジョン 分断から協調へ」(講談社)を発売するが、当初の発売日は15日だった。それでは総裁選に間に合わないと、急きょ11日に変更。14日の投開票にはギリギリ間に合ったとはいえ、投票権を持つ国会議員たちがこの本を読むヒマはなさそうだ。

 新総裁を迎え撃つ野党の反応はどうか。

「岸田氏には安倍首相の後継とのイメージが強く、野党としては戦いやすい。後継のイメージが付きすぎたことは岸田氏にとってマイナスになったのではないか。逆に石破氏の方が脅威。自民党内で政権交代が起きたかのような変化をアピールされてしまうから」と野党関係者は指摘する。

 本命視される菅氏だけでなく、石破氏と比べても岸田氏は「くみしやすし」とみられているのだ。

 かつて“ポスト安倍の筆頭”だったはずの岸田氏だが、実際には安倍首相からの禅譲はなく、ハシゴを外された格好となっている。それでも出馬する限り、起死回生の逆転を狙うしかない。ウリである堅実さをアピールし、“持ってない男”を返上できるか?