辞職・黒川氏“リークの黒幕”安倍政権への批判そらすため切り捨てられたか

2020年05月21日 16時00分

 黒川弘務東京高検検事長(63)が、コロナ禍で緊急事態宣言が出ているさなかに賭け麻雀に興じていた疑いがあると21日発売の週刊文春が報じ、黒川氏は賭けを認めて同日に辞職の意向を示した。黒川氏といえばスキャンダルから政府を守る「官邸の守護神」とやゆされる人物。先送りとなった検察庁法改正案の騒動も黒川氏の前例のない定年延長が原因だった。今回の報道を巡っては「安倍政権への批判をそらすためにリークさせた人物がいる!?」との声も。しかも“第2の守護神”というべき「ポスト・黒川氏」の出現可能性まで指摘されている。

「賭け麻雀をしていたのならアウトでしょう。今どき賭け麻雀をやっている公務員、しかも幹部がいるなんて驚きですよ」とあきれ返るのは法務省関係者だ。

 異例の自身の定年延長問題で渦中の人となっているにもかかわらず、脇の甘い行動に厳しい視線が注がれている。

 週刊文春によると、黒川氏が麻雀をしたのは5月1日と13日。新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言下のことだった。場所は都内にある産経新聞記者の自宅で、黒川氏と産経記者2人、朝日新聞社員の元記者1人で3密状態の中、賭け麻雀をしていたとされる。

 法務・検察当局は文春報道の事実確認をするため、内部調査を行う方針だ。産経、朝日両社も記者の賭け麻雀が事実ならば問題とする見解を発表した。

 賭け麻雀は賭博罪に当たり、東京高検検事長にはあるまじき行為だ。公明党の石田祝稔政調会長は「事実であれば職務を続けられる話ではない」と辞職要求。野党も「説明責任を果たしてもらいたい。説明できないのなら、任にあらずとならざるを得ない」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と批判していた。

 自民党や検察内部からも「辞職やむなし」と突き放され、本人も決意した。黒川氏は官邸の中でも菅義偉官房長官に近いとされてきた。検事総長を除く検察官は定年が63歳となっていたが、2月に定年を迎えるはずだった黒川氏が、1月に前例のない法解釈変更の閣議決定により定年が半年延長になったのも、官邸との距離の近さゆえとみられていた。

「今の検事総長(稲田伸夫氏)が慣例通りなら夏に辞めるので、黒川氏を後任にするために官邸が定年延長を決めたという見方がもっぱらです」(永田町関係者)

 閣議決定だけでも批判されたが、安倍内閣は検察庁法改正案に検察幹部の役職定年について「内閣などの判断で延長できる」との特例規定を設け、ツイッターを中心に猛烈な反対運動が起きた。この影響で法案の採決が先送りされた。特例規定は黒川氏の定年延長の正当性を“後付け”するようなもの。それゆえ黒川氏が騒動の元凶と呼ばれていた。

 騒動が盛り上がり切ったところでの“文春砲”投下には永田町、霞が関の誰もが驚いた。

 冒頭の法務省関係者は「検察内部からも黒川批判があったし、官邸も安倍首相と菅官房長官の間がしっくりいっていないなど、いろんな勢力がうごめいており、一筋縄にはいかない。この件で政府批判が盛り上がったので、元凶である黒川氏に退場してもらい、批判をウヤムヤにしようと考えた人物がいるのではないか」と指摘する。

 ツイッター抗議が盛り上がったのは最近だが、1月の定年延長の閣議決定直後から野党を中心に批判は出ていた。黒幕的人物がいて、いざとなったら黒川氏を切り捨てて安倍内閣への批判をそらそうと考え、賭け麻雀のネタをリークした可能性があるのでは、というわけだ。文春は、5月1日の麻雀情報は「産経新聞関係者」が情報源だとしている。

 別の法務省関係者は「辞職後の面倒も政府で見るのでは? ほっぽり出して前川喜平・元文科省事務次官みたいに政府に批判的な言動をするようになっても困るでしょうから」とフォローはあり得るという。

 黒川氏の辞職で、検事総長人事や検察庁法改正案はどうなるのか。

「検事総長には黒川氏と同期の林真琴名古屋高検検事長か、1期下から選ぶとか言われています。官邸はそれら候補者を取り込んで“第2の黒川”にするのでは? そのメドが立ったから黒川氏はお払い箱になり、この報道につながったとすら思えます。改正案は秋に通すでしょう」(同)

 スキャンダルだらけだけに、安倍内閣はポスト黒川氏となる“第2の守護神”を求めざるを得ないのだ。