衆院静岡4区補選でN国党が仕掛ける「同姓同名ステルス作戦」全貌

2020年04月15日 16時00分

立花孝志党首

 14日告示された衆院静岡4区補選が異例の選挙戦となっている。新型コロナウイルスの影響で活動が制限されるだけでなく、立花孝志党首率いるNHKから国民を守る党が仕掛けたトンデモ戦法に地元は振り回されっぱなしなのだ。

 自民党の望月義夫元環境相の死去に伴う補選に立候補したのは、自民党の深沢陽一氏(43)、野党統一候補で無所属の田中健氏(42)、無所属の山口賢三氏(72)、そしてN国党の田中健氏(54)のいずれも新人の4人だ。

 コロナ禍で、屋内での集会や街頭演説も「3密」にならないよう配慮が求められるため、基本的には自粛。握手はもってのほかだ。国政選挙ながらも各党の幹部も応援入りは控える。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「非常にやりにくい選挙」とぼやくが、理由はそれだけではない。

 N国が野党統一候補の田中健氏と漢字も読み方も同じ田中健氏を擁立したことで、野党勢はもちろん、選挙管理委員会、地元メディアも大慌てで、対応に苦慮しているのだ。

「田中健」と投票された場合、2人の区別がつかなくなる。案分票となり、得票割合に応じて、振り分けられる。選管では投票用紙に氏名以外を書き込んだ場合は無効となるルールを変え、年齢併記を有効とする措置を取った。

 そのため案分票を少しでも減らそうと、野党統一候補の田中氏は選挙カーやポスター、ネット上で「42歳」を大きくアピール。「42歳 田中健」と投票してもらえるように周知している。

 一方で、N国の田中氏は表舞台には一切立たない“ステルス作戦”に出ている。地元メディアの事前取材を断り、選挙公報にも掲載なし。選挙ポスターを張らなければ、候補者本人が現地に入る予定もない。2人の「田中健」が立候補しているのを知らないまま投票する人も出てきそうだ。

 N国の立花党首は今回の選挙戦の狙いをこう話す。「全く同じ名前の候補が出た場合、どのような票の割れ方をするのかテストしたい。ネット上では支持者向けに『N国の田中健』への投票を訴えるが、現地では一切活動しない。ウチは弱小政党。奇襲を仕掛けることで何をしている政党かを知ってもらいたい」

 チェックを入れるなどの記号式投票にすれば、今回の混乱は避けられるが、日本はいまだ一部を除き、自書式投票が主流となっている。N国の同姓同名候補擁立は単に選挙を混乱させているかに見えるが、ガラパゴス化している投票方法に一石を投じる狙いもある。

 自民党の深沢陣営は“同姓同名”“ステルス作戦”の火の粉を浴びることはなさそうだが、喜んでもいられない。立花氏は「今回は身内に田中健がいたので、立候補させた。自民党を利することになるかもしれないが、次の衆院選では“深沢陽一”の同姓同名を募集して、候補者に立てたい」と真顔で話す。補選は26日に投開票される。