横綱・米国VS小結・イランの軍事力 戦線拡大望まない両国ホンネ

2020年01月09日 16時00分

ハメネイ師(ロイター)

 イランが米軍駐留のイラクの基地を弾道ミサイルで攻撃し、両国の全面衝突の危機が懸念されるなか、米トランプ大統領が日本時間9日未明の演説で「イランに対して軍事力は用いたくない」と反撃は行わないと表明した。会見でトランプ氏は「イラン指導部に強力な制裁を科し、イランが態度を改めるまで継続する」と発言。イラン側が「休戦を望んでいるようだ」とも語り、武力衝突は拡大しないとの認識を示した。

 8日未明のイランの弾道ミサイル攻撃は2回にわたり計15発が発射され、イラク中西部アンバル州のアサド空軍基地に10発、北部アルビルの基地に1発が着弾した。

 トランプ氏は攻撃による米軍の死者はなかったとしたが、イランの主要メディアは8日、イラン革命防衛隊の情報を引用し、米兵80人が殺害され、200人が負傷したと報じていた。

 中東情勢に詳しい戦場ジャーナリストの久保田弘信氏は「イラン側は国内事情として英雄のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことへの報復をしなければ世論がコントロールできなかった。“米国のテロリスト80人”を殺害したと報じたのも国内向けに誇張した可能性がある」とみる。

 イラン国営テレビによると、同国は攻撃を「殉教者ソレイマニ作戦」と命名。報復を予告していたイランの最高指導者ハメネイ師は8日、「米国に平手打ちを食らわせた」と、作戦は成功したと演説した。米軍は中東から追放されるべきとし「米国はイランを破壊したいと考えている」と強く非難した。一方でザリフ外相は「均衡の取れた自衛措置を実行し、完了した」とツイートした。

 米国が反撃すれば開戦となりかねないが、久保田氏は「攻撃前、イランは米国に通達し、米国側はミサイル発射を探知し、避難したとの報道もある。本音はお互いに本格的な戦争はしたくない。イスラム教シーア派の盟主イランだが、軍事力では最強の横綱・米国に比べ、小結級。国内事情から張り手で報復した形。今後は戦争ではなく、米国に石油利権を第三国を通じて融通するなど、水面下で落としどころを探るのではないか」とみている。