【藤本順一、上杉隆の言いたい放談】2013年6月22日掲載紙面から
東京都議選(23日投開票)や参院選(7月4日公示、21日投開票予定)の選挙戦突入で、政治家の発言がヒートアップしてきた。安倍晋三首相(58)はフェイスブック上で元外務官僚を名指しで批判すれば、自民党の高市早苗政調会長(52)は「原発で死者なし」発言を全面撤回。橋下徹大阪市長(43)も“毒ガス噴射”が止まらない。本紙「永田町ワイドショー」藤本順一氏、元ジャーナリストの上杉隆氏が物議を醸す場外乱闘をジャッジした。
藤本:安倍首相がフェイスブックで田中均元外務審議官(66)を「外交を語る資格はない」と批判していたけど、一民間人の言論活動を、国家の最高権力者が名指しで否定するのは人権蹂躙(じゅうりん)も甚だしい。
上杉:田中氏は小泉政権下、日朝交渉の実務責任者として「一時帰国した拉致被害者5人を北朝鮮との約束どおり送り返すべきだ」と主張して当時、官房副長官だった安倍氏と対立した。
藤本:その田中氏が安倍外交の右傾化を批判したものだから対立が再燃したわけだけど、だからといって田中氏に外交を語る資格があるかどうかは別問題だよね。しかも、あのとき、安倍氏が拉致被害者5人を日本にとどめたことで日朝交渉は頓挫し、いまだに拉致問題は解決していないわけだから、結果的に安倍氏の判断は間違っていたことになる。小泉純一郎元首相(71)もずるくて、国民世論が北朝鮮への批判を強めると、さっさと二国間交渉から手を引いて、核とミサイル問題を話し合う6か国協議の場に拉致問題を丸投げしてしまった。
上杉:そもそも小泉首相の訪朝前、安倍氏が拉致問題に今より積極的に取り組んでいたとはいえないし、たとえ田中氏に非があったとしても結果責任は官僚ではなく、政治家が負うべきです。
藤本:拉致問題は基本的に二国間協議に委ねられるべきです。あえて誤解を恐れずに言うなら、日朝が平和条約を締結し国交が正常化すれば、拉致問題はおのずと解決に向かうはず。
上杉:安倍首相本人によるフェイスブックの書き込みは以前から当欄でもやめるよう指摘していました。フェイスブックやツイッターを利用するのはいいが、政治的な発言は回避するべき。公務と関係ないところで騒動になって、無駄な時間を費やすことになる。
藤本:ネット論議はともかく、安倍首相の応援団を自他ともに認める高市政調会長が「原発事故で死者が出ていない」と発言し、全面撤回に追い込まれた。先月も政府見解を無視して村山談話を否定し、釈明に追われたばかりだけど、その言動の軽さはさすがに安倍側近だけのことはある(笑い)。
上杉:高市氏の発言は論外だけど、メディアも自分たちの報道を見直したほうがいい。私は3・11直後から原発事故による自殺や、移動に伴う体調悪化で亡くなった方など関連死の深刻さを指摘していましたが、当時は「そんな人はいない」「ウソをつくな」とコメンテーターやメディアから随分叩かれた。それが2年たったら、全く逆になっているから驚かされる。
藤本:上杉さんがうそつき呼ばわりされたのは気の毒だけど、原発事故直後のことについて言えば、実際に飛び散った放射能を浴びて亡くなった人はいないわけだし、事故被害の客観的評価は時間軸と被害者の線引きによって変わって当然だと思うよ。高市発言が問題なのは、その事故の評価を過小に見積もり、原発の再稼働を正当化したこと。被災者の心を深く傷つけてしまったことは撤回して済む話じゃない。それはともかく、お騒がせ発言といえば、大阪のテレビ番組で橋下氏が水道橋博士(50)に従軍慰安婦発言を批判され「小金稼ぎのコメンテーター」と侮辱したそうだね。怒った博士が番組降板を宣言したとかでスポーツ紙が大騒ぎしているけど。
上杉:博士はテレビでお金をもらって出ている以上、最後まで責任を持って出演するべきで、途中退席は社会人として失格ですよ。
藤本:社会人というより漫才師失格じゃないの。まあ、どうでもいいことだけど、ボクだったら「売春宿から上前はねる橋下弁護士よりマシだ」とでも切り返してやったけどね(笑い)。
☆ふじもと・じゅんいち=1958年、福岡県生まれ。新聞、雑誌記者を経て独立、取材執筆集団「メディアフォーラム」代表。「建設業界・談合が崩壊する日」「永田町奇譚 もしニッポンの総理が東スポを愛読してたら…」など著書多数。本紙で「永田町ワイドショー」好評連載中。
☆うえすぎ・たかし=1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ取材記者、フリージャーナリストを経て、ミドルメディア「NO BORDER」代表。近著に森達也氏との共著「誰がこの国を壊すのか」など多数。












