築地から豊洲への市場移転が不当に延期されたことで、無駄な維持管理費が発生したとして、水産仲卸業者らが小池百合子東京都知事に約6190万円を請求した住民訴訟で、東京地裁は26日、請求を棄却した。小池氏は“全面勝訴”と喜びたいところだが、都議会は目下炎上中でそれどころではない。
住民訴訟を巡っては、2016年11月に予定されていた市場移転を都知事に就任した小池氏が延期と決定。水産仲卸業者らは「議会に諮ることはせず、数人の取り巻きの意見を聞くだけで、独断に近い形で安易に発表されたもの」と断罪。毎日500万円の税金が無駄になったと主張していたが、地裁は都知事選で小池氏が「移転は一旦立ち止まる」と明言し、選挙の争点になった点にも触れ「裁量権の範囲から逸脱、濫用したとは認めがたい」とした。
移転延期までは有言実行だった小池氏だが、その後は自らの言葉がアダとなって迷走を重ねている。17年6月に「築地は守る、豊洲は生かす」と築地再開発で食のテーマパーク化をぶち上げ、都議選で「都民ファーストの会」が圧勝。ところが、先月発表された再開発案は国際会議場や展示場が軸で、市場機能はなし。さらに跡地を売却せずに市場会計から一般会計に移すため、5423億円の費用が補正予算案に盛り込まれた。
小池氏の変節を巡って、都議会は紛糾し、20日開会日の施政方針演説は深夜に行われる異例の事態に。都議会自民党の吉原修都議は26日の代表質問で「都知事はあまりにチグハグで、対応のすべてが場当たり的」と批判。小池氏は「豊洲と築地の両方を生かすとした大きな方向性はなんら変わっていない」と抗弁したため、野党席からは「すり替えだ」と怒号に包まれた。
来月4日の経済・港湾委員会には、異例ともいえる小池氏の招致が決定した。小池氏を支える都民ファーストの会と公明党との間で亀裂が生じはじめており、野党の自民党や共産党は徹底追及する構えだ。