厚生労働省が「毎月勤労統計」の一部調査を不適切な方法で実施していた問題を受けて、安倍政権が大混乱している。

 同統計は、働く人の賃金や労働時間、雇用動向の変化を把握するため、厚労省が都道府県を通じて毎月実施・公表しているものだ。

 調査項目は1人当たりの基本給や残業代など。従業員5人以上の事業所が対象で、従業員500人以上の場合は全てを調べるルール。しかし、東京都内では全数調査の対象が約1400事業所あったが、実際には3分の1程度しか調べられていなかった。雇用保険の失業給付や労災保険などの過少支給の対象者は延べ1973万人で、総額は537億5000万円に上るという。

 同省の不適切な調査に政府関係者は「厚労省は『意図的に不適切な調査をしたわけではなかった』というが、組織的に隠蔽がなかった証拠が示せていない状況です。厚労省は事業所側に緻密な数字を要求してきた。作業に時間と手間をかけた事業者側にしたら、怒るのは当然です。今後、統計委員会の外部有識者に調査を依頼することも検討されています」と話す。

 自民党の森山裕国対委員長は11日、立憲民主党の辻元清美国対委員長が衆院予算委員会や厚労委の開催を要求したことを受け「厚労委理事会で判断することだが、できるだけ早く開くことが大事だ」と前向きな姿勢を示した。

 立民は、週明け15日から国会内で厚労省のヒアリングを開始することを決めた。追及ポイントについて立民議員は「厚労省の一部職員だけで、意図的に情報操作することは難しい。だが省内でアベノミクスに有利に働く情報操作があったのではないかと疑いが持たれても仕方のない状況です。財務省、文科省を含めて官僚のレベルは地に落ちた。解体的な出直しが求められている」。

 一刻も早い原因究明と再発防止が待たれる。