安倍晋三首相は22日、2019年10月の消費税増税への対策とするキャッシュレス決済時のポイント還元制度に関し、還元率を支払い代金の5%とする方針を表明した。特典は2%の増税分を上回り、中小店舗での利用限定ながら、消費者は現在より負担が減る。

 実施期間は、20年東京五輪・パラリンピックまでの約9か月間で調整すると述べた。官邸で会談した自民党の岸田文雄政調会長が記者団に明らかにした。

 政府はこれまで還元率を2%とする方針だった。上積みで消費や中小店の客足を確実に保つ効果を狙うが、単純計算で財政支出は2・5倍に膨らむため、増税の意義を疑問視する声も出そうだ。

 政府関係者によると、還元策は19年10月に始め、20年7月の五輪開幕直前までの見込み。小売りや飲食をはじめ、中小事業者の店でクレジットカードや電子マネーなどを使った人に通常付くポイントに5%分を上乗せすると想定している。ポイントは幅広い買い物に利用できるため、1000円の支払いで50円分が実質的に浮く計算だ。

 政府関係者は「今回の消費税対策は、消費税率の引き上げによる個人消費の冷え込みを避ける狙いがある。実施されればキャッシュレス化が加速する。今後、IT技術を使った新しく便利な金融サービスが次々に登場することが予想され、手数料の引き下げでモタモタしているクレジットカード会社などは、ダメージを受ける可能性がある」と解説する。

 しかし、ポイント還元終了前に駆け込み需要が発生した場合、その後に反動減が起こり、安倍内閣の思惑とは裏腹に、旧民主党政権の時のようにデフレ景気に向かうことが危惧される。

 消費税率10%に反対の野党議員は「税収を上げるために増税するのに、還元で無駄なコストが生じる。消費増税が手段ではなく目的になっているのは本末転倒。消費者は、安倍内閣のポイント還元や軽減税率などにより混乱しています」と話した。