翁長雄志知事(享年67)の死去に伴う沖縄県知事選が30日に投開票され、前自由党衆院議員の玉城デニー氏(58)が、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)を破り、初当選を果たした。県選挙管理委員会によると、玉城氏の得票39万6632票は、1998年に稲嶺恵一氏の獲得した37万4833票を超え、同県知事選で過去最多となった。佐喜真氏(31万6458票)に8万票以上の差をつけたのは、翁長前知事の弔いムードを味方につけたことが大きいが、佐喜真陣営の自滅ぶりも目立った。

 エゲつない選挙戦だった。下馬評通り、玉城氏が勝利したワケだが、すんなりといったわけではない。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画に反対する翁長前知事が8月8日に急死。音声データで“後継指名”された玉城氏は「オール沖縄」での弔いムードを前面に押し出した。

「集会先では、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜け、ガリガリに痩せ細った翁長さんの顔写真がプリントされたウチワが配られた。デニー氏のライブのステージ上でも終末期の翁長さんのボードが登場した。少し引いて見ると、異様な光景でしたね」とは政界関係者。

 加えて、先月16日に引退した沖縄出身の歌手・安室奈美恵さん(41)が翁長氏死去に際し「知事のご遺志がこの先も受け継がれ…」とコメントしたことを最大利用。ネット上では安室さんが“デニー支持”であるかのような書き込みも拡散された。真に受けた人は少なからずいただろう。

 一方、自民・公明が推薦する佐喜真氏もエゲつなかった。公明党の支持母体である創価学会は5000人もの学会員を動員。地元テレビ関係者によると「一軒一軒回って、支持を訴えていた。若者には『佐喜真に入れれば、この辺りにスタバ(スターバックスコーヒー)ができる』と、適当なことを言って関心を引こうとしていた」という。

 ここで負ければ、辺野古移転は再び暗礁に乗り上げ、3選を果たした安倍晋三首相(64)の出鼻をくじくことにもなりかねない。期間中は菅義偉官房長官(69)が陣頭指揮を執り、知名度抜群の小泉進次郎筆頭副幹事長(37)は3回も沖縄入り。23日には、小池百合子東京都知事(66)までもが佐喜真氏の応援演説に駆けつけた。

 前出の地元テレビ関係者いわく「小池さんは、2016年の都知事選が原因で自民党を離党し、公然と政権批判していた人。どちらかといえば政府与党とは反目のイメージが強い。佐喜真陣営からも『なぜ小池さんが…』という声が上がっていましたね」。

 かつて一大旋風を巻き起こした小池氏だが、昨年の衆院選で自らが代表を務めた希望の党が大敗し、求心力は低下。それでも、小池氏の演説によると二階俊博幹事長(79)から応援演説のオファーを受けたそうだが、佐喜真陣営からは「逆効果になりかねない」という声が出ていたという。

 佐喜真陣営は進次郎氏の応援演説はSNSで大々的に告知したが、小池都知事に関してはスルー。前出の政界関係者によれば「小池さんが来たのは、品川区長選で都民ファーストが野党候補を推薦したため。これに公明党が激怒し、それにビビった彼女は品川区長選にできるだけ絡まないというポーズを示すために、沖縄入りした。要は大人の事情。沖縄のことを考えての行動ではありません」という。

 なお、その品川区長選は30日投開票の結果、自民、公明推薦の無所属現職・浜野健氏(71)が、立民、共産、自由、都民ファ推薦の学校法人理事の無所属新人・佐藤裕彦氏(60)らを破り4選した。

 選挙戦終盤では、ヤケになったのか「携帯料金の4割値下げ」をしきりに訴えていた佐喜真氏。言うまでもなく沖縄県知事にその権限はない。最後は自滅だったようだ。