新潮社は25日、性的少数者(LGBT)への表現が差別的だとの批判を受けている月刊誌「新潮45」の休刊を決めたと発表した。歴史ある月刊誌の事実上の廃刊に衝撃が広がっているが、なぜここまで追い詰められるほど“暴走”したのか?

 自民党の杉田水脈衆院議員(51)が同誌8月号で、LGBTを「子供をつくらない、つまり『生産性』がない」などと表現し、自民党本部前では抗議デモが行われるなど炎上した。

 すると10月号では「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」との特集で、文芸評論家の小川栄太郎氏が、LGBTの権利を擁護するなら「痴漢が触る権利を社会は保障すべきでないのか」などと寄せ、さらに炎上。社内からも批判を浴び、21日に同社の佐藤隆信社長が10月号に関する談話を発表したが、その4日後、同社は休刊を発表した。

「ここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません。その結果、このような事態を招いた」と説明した。

 出版関係者は「一昨年に編集長が代わり、フォーカス出身の担当役員の介入もあって、極端に右傾化していた。編集幹部による秘密主義ともいえる方針で部員同士の情報共有がなく、社員の退社が相次いでいた。先行きを危惧されていた中で、今回の杉田論文のようなことになった」と指摘する。

 新潮45は、1985年に創刊(前身の「新潮45+」は82年創刊)され、これまで数多くの作家を輩出してきた。

「最近の部数は1万部を割っていて、赤字だったが、伝統と歴史ある月刊誌で、いい作品も出していた。休刊にはしたくなかったようだが、今回の問題で収拾がつかなくなり、現場を全く分かっていない社長もびびってしまった」(前出の関係者)

 同社は佐藤社長と編集担当役員の2人を3か月間、10%の減俸処分とした。今回の騒動は炎上商法ともいわれたが、そんな余裕もなかったようだ。

 一方、騒ぎの発端となった杉田氏は8月2日、自民党からの指導を受けた上で「真摯に受け止め、研さんに努めていく」とのコメントを事務所を通じて出して以降、記者会見など公の場で説明を行っていない。ツイッターやブログ、フェイスブックも騒動が起きてからは一部を除き更新されておらず、“沈黙”を保っている。