「トイレットペーパー小説」30万冊ヒット

2012年08月07日 12時00分

 トイレの中が最も落ち着くという人は多く、本を持ち込む人もいるほどだ。そんなトイレ好きに受け入れられそうなトイレットペーパーを製造・販売しているのが、静岡・富士市にある林製紙(株)だ。トイレットペーパーで有名作家の書き下ろし小説が読めるという。同社の林浩之社長に話を聞いた。

――トイレットペーパーで小説を読めるとは画期的です

 林社長:7年前からトイレットペーパーにいろいろなものをプリントして販売しております。その一環で2009年に「リング」などで有名な小説家の鈴木光司さんに、トイレットペーパーにプリントする書き下ろし小説をお願いしたのが短編ホラー小説「ドロップ」だった。日本一怖いトイレットペーパーとして、これまでに「ドロップ」3部作を書いてもらい、計30万“冊”売り上げました。

――ロールではなく“冊”と呼ぶんですか

 林社長:「ドロップ」は、大手書店から「ぜひ置かせてほしい」とのラブコールがあり、山積みにしていただいた。これはもうトイレットペーパーの範ちゅうを超えて“本”ですよね。だから、あえて“冊”と。

――ほかにも著名人を起用した商品が

 林社長:漫画家・やくみつるさんの4コママンガが楽しめる「やくみつるのフード・トイペ」や、経済アナリスト森永卓郎さんの経済に関する話を拝読できる「森永卓郎の年収崩壊時代」ですね。最初はトイレットペーパーにプリントするために作品を書き下ろしてくれなんて失礼かと思ったんですが、やくさんがトイレットペーパーの包装紙コレクターだと知っていたので申し入れたところ、快諾してもらった。森永さんも「やくさんに僕のトイレットペーパーをプレゼントしたい」と、快諾してもらいました。

――どのくらいの商品数があるんですか

 林社長:うちは基本的に少ロット多品種の製造を行っており、オリジナルで製作したものは約50種類、外部委託も含めれば数は知れません。少ロット多品種は、製造コストがかかる割に利益回収率が低いので製造業ではあまり行わない。でも、うちは工場が1つしかないし、プリントの型盤もゴムで製作できるので、割とコストをかけずに多品種を製造することができた。

――販売のきっかけは

 林社長:ここ十数年、製紙業界は景気がよくない。高度経済成長期に紙の生産量が増大して需給バランスが崩れ、販売店や消費者が圧倒的に強くなったことが原因です。特に家庭向け商品の値崩れが顕著で、スケールメリットのない中小の製紙会社は苦しい状況に追い込まれた。うちも大手さんと同じ土俵では戦えない。だったらニッチな(大企業が手をつけないような)商品を作ろうと思い、付加価値のあるトイレットペーパーを考えました。

――プリントのアイデアは豊富ですよね

 林社長:当初は私の思い付きでしたが、今は取引先と情報交換して企画会議を行ったり、社内公募も行っています。ちなみに社員のアイデアが商品化されれば報奨金3万円、発売から3か月以内に10万個以上を売り上げれば10万円を追加支給しています。

――今後は

 林社長:海外展開の拡充です。英訳版「ドロップ」の販売を始めたが、今ある商品のターゲットは日本市場に限られている。今後は海外で通用する商品を作っていきたい。