“いきなり破綻”もある!? ステーキ専門店「いきなり!ステーキ」が、年末年始にかけて既存店の約1割に当たる44店舗を閉店する。拡大路線を続けたことによる自社競合、人件費の高騰などが重なり業績は急降下。さらに社長の“直筆文騒動”が勃発し、客離れを招いてしまった。「やっぱりステーキ」や「カミナリステーキ」などの新興勢力も出現し、来年は“ステーキ戦争”が激しさを増しそうだ。

「いきなり!ステーキ」、略して「いきステ」はステーキを立ち食いスタイルで安価で提供することで、急拡大してきた。

 2013年に1号店を東京・銀座にオープンして以来、業績は右肩上がり。国内外の店舗数は17年末に187だったものが、19年1月には397と倍増し、18年11月には全都道府県への出店を達成した。17年2月には米国進出を遂げ、店舗を展開するペッパーフードサービス社は18年9月に現地のナスダックに上場も果たした。

 まさにイケイケどんどんで突き進んできたわけだが、その時点で足元はグラついていた。既存店売上高は18年4月に前年同月比でマイナスに転じるや、20か月連続で前年割れ。今年10月には前年同月比41・4%減という衝撃的な数値が明らかになった。

 ペッパー社は19年12月期の業績について、当初売上高935億円(前期比47・3%増)、営業利益55・9億円(同44・8%増)の大幅な増収増益を見込んでいたが、11月の発表では一転して売上高665億円(前期比4・8%増)、営業損益7・3億円の赤字に下方修正を余儀なくされた。

 この発表では業績予想の修正とともに、この年末年始にかけて全国489店舗のうち44店を閉店することも公表。対象店は続々と判明しており、4月にオープンしたばかりの「浜松三島店」(静岡県)や、鳴り物入りで進出した都内の「虎ノ門店」「銀座六丁目店」なども含まれることが分かった。この44店と収益性の低下が見込まれる3店については、16億8500万円の特別損失計上も明らかにしている。

 ネット上では「いきなりフケーキ(不景気)」ともやゆされているが、業績悪化の原因は?

「同じ地域に複数の店舗を構えたことで客を食い合うカニバリゼーション(自社競合)が起きた。人件費も高騰。それを補うために高価格帯の商品を投入したが、それも裏目に出てしまった。『いきステ、地味に高いよね』となってしまった」とは市場関係者。

 社長も“やらかした”。業績低迷を受け、一部店舗には創業者・一瀬邦夫氏の直筆文が貼り出されたが、その内容が「日本初の格安高級牛肉の厚切りステーキを気軽に召し上がれる食文化を発明」「店舗の急拡大により、いつでもどこでもいきなりステーキを食べることができるようになりました」とさんざんアピールした上で「お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります」と訴えるものだった。

 これがネット上を中心に「上から目線」と映り、「客のせいにするな」「閉店しても困らない」と批判が相次ぐことになった。

 前出の市場関係者は「急拡大したツケで、自己資本が落ち込み、銀行からの借入金を返済できない債務超過に陥る可能性も出てきている」と指摘。“いきなり破綻”もあり得るという。

 業界の雄が苦戦する一方、業績を急拡大しているのが、沖縄発祥の格安ステーキ店「やっぱりステーキ」だ。15年2月に那覇市に1号店をオープン。200グラムのステーキを1000円で提供し、17年からはフランチャイズ制を導入したことで、現在沖縄県内で23店舗、県外で21店舗が立ち並ぶ。

 このほか、外食チェーンのモンテローザが母体の「カミナリステーキ」や、居酒屋「はなの華」や「豊丸水産」などを運営するチムニー㈱が運営する「アッ!そうだステーキ」などもある。

「どれも“いきステ”のパクリかと言われるかもしれないが、本家が傾いているのだから、来年は群雄割拠になる」(同)

“ステーキ戦争”の勝者になるのは――。