メガバンク法人税不払いのカラクリ

2012年06月06日 12時00分

 三井住友銀行、みずほ銀行などの大手銀行が、法人税の納付を順次再開する見通しとなった。3大メガバンクに名を連ねる銀行が今まで、なぜ納付せずに済んでいたのか? マネーリサーチ代表の山本伸氏に解説してもらった。

 3大メガバンクのうち、すでに三菱UFJフィナンシャルグループは法人税の納付を再開していたが、ついに残りの2つである三井住友フィナンシャルグループと、みずほフィナンシャルグループも法人税の納付を再開する。10年以上にわたって大手銀行が法人税の納付をせずに済んでいたのは「欠損金の繰越控除制度が適用されてきた結果で、決して課税逃れをしてきたわけではない」(山本氏)。

 欠損金の繰越控除制度は1950年に導入された。会社に欠損金、つまり赤字が生じた場合、その欠損金を翌年以降に繰り越して、事業年度の利益(控除前所得)から繰越欠損金分を控除できるというものだ。

 この制度が導入された50年当初、認められていた欠損金の繰り越し期間は5年間だった。それが2004年の税制改正で7年間になり、昨年12月には9年間に延長されている(ただし、控除限度額はその事業年度の控除前所得の80%に制限。中小企業を除く)。

「大手銀行が10年以上も法人税を納付せずに済んだのは、昨年12月の改正以前の制度が関係する。それまでは控除限度額の設定がなかったため、過去5年間、もしくは7年間にさかのぼって、繰越欠損金が事業年度の利益を上回っている限り、100%の控除が受けられた。幸か不幸か、多くの大手銀行はバブル崩壊後の失われた10年間で、単一年度の利益をはるかに上回る多額の不良債権を背負ったので、多くが10年以上にわたって法人税を納付せずに済んできた」(山本氏)

 しかし、昨年12月の改正で控除限度額が80%に制限されたため、今後、大手銀行が利益を上げる限り、法人税を納付しなければならなくなる。例えば、A社が12年度に5000億円の欠損金を出したと前提する。控除限度額がない前制度では、翌13年度に1000億円の利益を上げたとしても、控除が適用されると1000億円の利益に対する法人税の課税対象額は0円だった。

 それが控除限度額が80%に制限された現行制度では、13年度の控除金額は(利益1000億円×80%=)800億円となり、法人税の課税対象額は(利益1000億円―控除限度額800億円=)200億円になる。

 ちなみに3大メガバンクとりそなホールディングスの11年度の四季報から、納付するであろう法人税額を単純計算で推測すると、約1兆円に相当する。実際はこれよりも若干少なくはなるが、11年度の日本の法人税収が約7・8兆円だから、この4行だけで相当額の法人税を納めることになる。

 バブル期に銀行が行った無節操な融資で抱えた多額の不良債権処理が、こうして間接的に国民に負担を強いる形で行われてきたことは残念だが、ようやく法人税納付を再開することになったのは、日本の少ない税収を考えると明るい話題といえるかもしれない。

 また、欠損金の繰越控除制度は「青色申告書を提出する企業なら、どこでも利用することが可能で、企業の節税対策に使われるケースもある」(山本氏)。

「最近では東証一部上場の大手製造業が、元外資系のレジャー企業を買収し子会社化した。その子会社は倒産した企業を買収して黒字転換したらすぐに売り、常に欠損金の繰越控除を受けるビジネスモデル。だから親会社の大手製造業も場合によっては、連結決算で欠損金の繰越控除を受けられる。つまり、継続的に法人税を節税できるシステムを構築した」

 ただし、やりすぎると規制される可能性もあるという。