暴力団組員と交際し捜査情報を漏らしたとして警視庁は19日、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、新宿署留置管理課の女性巡査(23)を書類送検し、停職6か月の懲戒処分にした。巡査は同日付で依願退職した。

 警視庁によると昨年12月中旬、新宿署内で携帯電話を使い、30代の組員の男が捜査対象となっている事件について罪名や捜査の進捗状況などを漏らした。「交際が発覚すれば警察官を続けられず、情報を教えれば黙ってくれるのではないかと思った」と供述している。

 巡査は同署組織犯罪対策課に勤務していた昨年10月下旬、仕事で組員に公用の携帯電話から連絡。同11月から何度もデートに誘われ、同月下旬に初めて食事し交際を始めた。

 巡査は、同署で捜査していた暴力団関係者同士による路上トラブルに、組員が関与した疑いが持たれていることを把握。昨年12月に組員から「自分が捜査対象になっている事件はないか」と聞かれ、署内で書類を確認し、容疑名などを伝えた。

 今年1月になって組員から金を無心されるようになり、別れたという。

 警視庁は19日、監督を怠ったとして新宿署組織犯罪対策課長ら4人を所属長注意などとした。

 警視庁の土屋暁胤警務部参事官は「警察の信頼を失墜させる行為。再発防止に努める」とコメントした。

 元暴力団関係者は「ヤクザはどんな小さな弱みからでも相手に付け入り操る。組員が12月に『捜査対象になっている事件はないか』と聞いたら、捜査が進んで、そのヤクザの人間関係として自分の存在が明るみに出るかも…と不安になって、捜査の進展を確認するために書類を見てしまったのだろう。そして書類を見たと知ったヤクザは『オレに頼まれて書類を見たと言うぞ』と脅し、言いなりにさせたのだろう」と推測する。

 警察官が暴力団と交際するとは信じられないが、同関係者は自分の昔の体験として「警察官は正義感があり勝ち気。だから、女性警察官に『お前はオレの女になる』と言い続け、当然『そんなわけない』と否定すれば『じゃあ一回だけ会ってみろ。それでオレの女にならないんだったら信用してやる』とけしかけ、デートにこぎつけたこともあった」と話した。