学校法人「森友学園」の国有地取引をめぐる“決裁文書書き換え疑惑”が波紋を広げるなか、近畿財務局で当時国有地売却を担当していた男性職員Aさんが自殺していたことが9日、判明し、衝撃が広がった。その後、事態は急展開。同日夕には一連の疑惑のキーマンとされる佐川宣寿国税庁長官(60)が辞任を表明し、麻生太郎財務相(77)も緊急会見を行った。あれほど逃げ回っていた2人が一斉に動いた背景には、Aさんが残した遺書の存在があったといわれている。その衝撃の中身とは――。

 元大阪地検特捜部主任検事だった前田恒彦氏はツイッターでこうつぶやいた。

「つらい話ですが、特捜部では『自殺者が出る事件は本物だ』と言われています」

 今月2日に朝日新聞が報じた決裁文書の書き換え疑惑。当初、安倍晋三首相(63)は「また朝日の誤報じゃないのか」とタカをくくっていたというが、雲行きは次第に怪しくなった。

 内容の異なる決裁文書の存在について、財務省は「調査中」を連呼し、麻生財務相は大阪地検特捜部が関連する捜査を行っていることから「捜査にどのような影響を与えるか予見しがたいため、答弁に関して差し控えなければならない」と繰り返した。

 そんななか9日、近畿財務局の男性職員Aさんが7日に神戸市の自宅で自殺していたことが判明。Aさんは国有地の売却などを行う管財部門に所属し、財務局が森友学園と売買交渉を行っていた2016年当時も在籍していたが、約半年前から休職していたという。

 問題の書き換えをしたともいわれるAさんの自殺はこの日表に出たが、官邸筋は前日8日に把握。Aさんの元上司だった財務省幹部が慌てた様子で官邸に出向いたという。なぜか?
「残された遺書の中身がシャレにならなかったためです。そこにはAさんの上司だったB氏の実名と『(書き換えは)Bからの指示だった』という趣旨の内容が記されていたそうです。さらに、B氏に改ざんを依頼した人物として、当時の理財局長である佐川氏の名前があったという情報もあります」(永田町関係者)

 一部情報では現場には遺書とともに、朝日新聞が論拠としている書き換え前の決裁文書が残されていたという話もある。

 遺書に名前があったとされる佐川氏はこの日の夕方、国税庁長官を辞任することを表明。理由について「今回取りざたされている決裁文書の話が国会で大きな議論になっており、提出時の担当局長だった責任を感じ、今回辞職を決めた」としたが、書き換えの有無については明言を避けた。

 Aさんの自殺については「残念だし、ご冥福をお祈りしたい。今日のニュースで知った。どなたが亡くなられたかも承知していない。職員の自殺についてはこれ以上お答えできない」と語った。

 佐川氏の辞任を受け、麻生氏も緊急会見を開催。佐川氏から辞任の申し出があり「世の中の信頼を損ねた点は認めなくてはならない」と辞任を容認した。確定申告の時期に国税庁長官が辞職するのは前代未聞。佐川氏には減給20%、3か月の懲戒処分が科される。

 一方で麻生氏自身の責任については「反省がないと追及したいわけ?」などといら立ち「行政文書は信頼できないという疑問を(国民に)持たせたのは大きな反省点」と語った。進退については「今、そういうことを考えているわけではない」とし、決裁文書の調査内容は来週早々に開示する考えを示した。

 別の永田町関係者は「今日の時点ではそう言うしかない。麻生さんの腹はもう決まっていて、週明けに調査内容を開示したタイミングで辞任するのではという情報が駆け巡っている」と語る。

 Aさんの自殺、佐川氏の辞任で、安倍政権はいよいよ窮地に立たされた。

 関係者によると、このところ安倍首相は体調が芳しくなく「毎日がギリギリ。人の話が頭に入らず、何度か聞き直す場面も目立つようになってきた」という。

 米トランプ大統領(71)と会談するために来月の訪米を予定している安倍首相だが「それまで総理大臣でいられるか」とまでささやかれている。