自称タリバン等に拘束されたジャーナリスト常岡浩介氏が語る「生還の心得」

2013年01月24日 17時31分

 アルジェリアの天然ガス施設がイスラム武装勢力に襲われ、プラント建設大手「日揮」の日本人駐在員が巻き込まれた人質事件で23日、新たに日本人2人の死亡が分かり、邦人の死者は9人となった。なおも1人が安否不明。今回の事件では、人質を取られた国は救出作戦に全く口を出せない問題が残った。では外国で人質になった場合、どうすべきか。政府組織や武装勢力などに4度も拘束されながら生き延びた、ジャーナリストの常岡浩介氏(43)に聞いた。

 今回のテロのリーダー、ベルモフタール司令官は、新たな犯行を予告。今後は、アルジェリア以外の地でもリスクが高まるともいえる。観光なら控えれば済むが、仕事でやむなく訪れることになったときなど、海外で武装勢力に襲われたらそう対応するべきか。

 ロシア、グルジア、パキスタンでは政府組織に拘束され、2010年にはアフガニスタンでタリバンを自称する政府側の武装勢力に157日間にわたって拘束されながらも無事解放された常岡氏は「無闇に逃げたり、反抗的な態度は取らない方がいい」と話す。

 アルジェリアの事件では空港へ向かうバスが武装勢力に襲撃され、逃げようとした日本人3人が銃殺されたとみられる。

「私も検問で突然、自動小銃を突きつけられた。隠れて逃げられるならそれでもいいが、見晴らしのいい砂漠では容赦なく撃たれる。反抗的な態度は刺激を与えるだけ。素直にホールドアップした方がいい」(常岡氏)

 犯人側との対話も重要となる。ペルシャ語が堪能だった常岡氏は頻繁に会話した。

「自分が危険か安全かも分からない、情報がないのが一番まずい。現地の言葉をしゃべることができるなら、そうするにこしたことはない」

 犯人との交流は奇妙な関係を生むことがある。

「犯人と人質が長い時間を共有すると、互いに親近感が湧く『ストックホルム症候群』になる。私の時も最初は犯人側が冷たかったが、次第に身の上話をしてきたり、携帯電話に詳しかったので設定を頼まれたりもした」

 アフガニスタンで拘束された際、常岡氏は携帯電話を直すふりをして、インターネットにアクセスし、ツイッターで自らの状況や犯人の情報を提供した。また、空が見渡せる庭などに出た際に手を振ったり、上半身裸になったりして、米軍の無人偵察機へのアピールを続けた。後に、米軍は常岡氏の位置情報をつかみ、爆撃を避けていたことが分かったという。

 常岡氏のケースでは人命優先とは言いがたい対応が取られた。犯人側が100万ドル(約9000万円)の身代金を要求したが、日本政府側は“即時無条件解放”を主張し支払いを拒否。常岡氏も日本政府に要求には応じないよう訴えた。結果的に、奇跡的な解放につながった。

 アルジェリア事件では交渉の余地はなく、軍が強行突入して多くの人質が惨劇に巻き込まれた。

「突入した軍は犯人、人質を関係なく攻撃する」ことを覚悟しなければならない。つまり人質救出作戦とは名ばかりで、掃討と隣り合わせだ。

「今後、同じような事件は頻繁に起こる可能性がある」と常岡氏は力説している。