“女装姿”で男性を誘い、睡眠薬入りの酒を飲ませて金品を奪った5件の連続昏睡強盗事件で起訴され、控訴していた“声優のアイコ”こと神いっき被告(33)の控訴審判決公判が14日、東京地裁で行われた。高裁は懲役10年の実刑判決を言い渡した一審判決を支持し、「解離性同一性障害(DID)による別人格が起こした犯罪で刑事責任能力はない」とした被告側の主張は退けられた。

 一審の最終意見陳述で神被告は「俺は無罪になっちゃいけないです。求刑通りの刑で俺は仕方がないんです。きっともっと被害者はいると思う。泣き寝入りした人たちにも本当に申し訳ない」と涙ながらに裁判所の判断を受け入れる意思を示したが一転、控訴した。

 この日の神被告は途中、吐き気を訴えて退廷するなど、体調が優れないのは誰の目にも明らか。私語厳禁の法廷で、まるで見えない誰かと手話で会話しているかのように、虚空に視線を送りながら両手指や口を動かしたり、時折「シーッ!」と口に人さし指を当てたりしていた。

 女性として生まれた神被告は、性別違和から普段は男性として生活したが、犯行時だけヒョウ柄ベレー帽にミニスカ姿で“女装”。逮捕後に妊娠がわかり、拘置所で女児を出産した。一連の犯行については「声優のアイコ」の人格が行ったとし、法廷では4歳児の「ゲンキ君」人格が出現し、幼児言葉で「お姉ちゃんは悪くない!」と“無罪主張”するなど、多重人格障害を主張していた。

 神被告と面会を重ねている知人によると「DIDを日本の司法でもっと考慮してもらえるように裁判を続けていきたい」と控訴理由を語っていたという。最高裁に上告する可能性があるが「体調を考えるともう(上告は)やめた方がいいのでは」とこの知人は話した。