埼玉県富士見市で2014年、ベビーシッターとして預かっていた男児(2=当時)を窒息死させたとして、殺人罪などに問われた横浜地裁の裁判員裁判で受けた懲役26年の判決を不服とした物袋(もって)勇治被告(29)の控訴審第1回公判が12日に東京高裁で開かれ、即日結審した。判決は来年1月30日予定。

 物袋被告側は男児について、目を離した隙に溺死したとして、殺意を否認。一審で無罪を主張したが、昨年7月に有罪を言い渡された。問われている罪状は殺人のほか、複数の男児や女児へのわいせつ行為や、わいせつ目的の誘拐など多数。一審では司法解剖を行った法医学者や、小児性愛傾向と断定した精神科医らが証人出廷し、小児性愛と殺人との因果関係が示唆された。

 弁護側は一審で殺人と他の罪が一緒に審理されたことを問題視。幼児の陰部をもてあそんだり、撮影した事実が、物袋被告への偏見を生み、心証を悪くしたまま殺人の認定に至ったという。控訴審でも「区分審理のやり方があった」と主張。そのうえで、「溺死の可能性」を指摘する法医学者と、事件の原因は同被告の「小児性愛でなく、幼いころにいじめられたPTSDだ」と指摘する精神科医の証人尋問を請求したが、高裁は許可しなかった。

 黒いスーツに丸刈り頭の物袋被告は、小児性愛の話が出るたびに星柄のファンシーなハンカチで涙を拭くようなしぐさを見せるが、一審から傍聴していた人は「トラウマの話が出てくるとハンカチを取り出すのは変わらない。泣いているようには見えない」。

 物袋被告は謝罪文を被害児童らの家族に宛てて書いて送ったが、すべて受け取りを拒否されているという。一審で無期懲役を求刑した検察側も控訴。類似の事件では死刑または無期懲役が妥当であって「少なくとも無期懲役」を求めている。