電通社長が違法残業裁判で謝罪 企業体質改善への厳しい道のり

2017年09月23日 17時00分

 新入社員の高橋まつりさん(24=当時)を過労の末、自殺に追い込んだ違法残業事件などで労働基準法違反罪に問われた広告大手電通(東京都港区)の初公判が22日、東京簡裁(菊地努裁判官)で開かれた。

 世論のブラック労働への関心の高まりが略式起訴ではなく正式裁判を開かせた。起訴状によると電通は、まつりさんを含む社員4人に15年10~12月、上限を最大で月19時間超過して違法に働かせていた。

 出廷した電通の山本敏博社長(59)は、公判を傍聴したまつりさんの母、幸美さん(54)と遺影のまつりさんに深々と一礼。起訴事実を認め「以前にも是正勧告を受けていたのにこのような事態になり責任を痛感している。まつりさんの尊い命が失われた。全役員、社員が一丸となって改革を完遂する」と証言した。

 検察側は「自社の利益を優先させ、違法な残業が常態化していた」と指摘し、罰金50万円を求刑して即日、結審した。

 電通は昨年、「ブラック企業大賞2016」で大賞を受賞。選考委員を務める旬報法律事務所の佐々木亮弁護士は「起訴内容は36協定(時間外・休日労働に関する協定)違反という長時間労働を生み出す様々な問題の一部が刑事手続きに付されたにすぎず、全容解明とはいかないが、抑止力となる正式裁判になったことは大きい」と評価した。

 佐々木弁護士は「人手不足の深夜帯などに1人態勢で長時間労働をさせて問題になった『すき家』(ゼンショーホールディングス)も第三者委員会を設置して変わろうとしているが、昼間のワンオペ(1人勤務)は今も直っていないと指摘されている。出来上がったシステムから脱却できず、もがいているように見える」と企業体質改善の道のりがいかに険しいかを指摘する。

 幸美さんは「公の裁判で電通の法律違反が裁かれたことは感慨深い。電通の取り組みを今後も監視していきたい」と話したが、電通は変わることができるのか。