7万人以上が経験した「裁判員制度」施行8年の現状

2017年09月20日 08時00分

 裁判員制度が施行されて今年で8年。この間、裁判員裁判の死刑判決を覆す控訴審判決が出たり、暴力団関係の殺人未遂事件で、被告の知人が裁判員に「ヨロシク」などと便宜を図るよう威圧的な声かけをした事件などマイナス面ばかりがクローズアップされている。裁判員辞退者や欠席者も年々増加し関心が薄れる中、裁判員制度の課題解決を考える公開シンポジウム(裁判員経験者ネットワーク主催)が先日、都内で行われた。

 裁判員経験者ネットワークによると2017年7月末時点で全国で7万7994人が裁判員(補充を含む)を経験済みだという。さらに裁判員候補選出の通知を受け取った人は240万人にも上る。国民の54人に1人は通知を受け取った計算だ。

 それなのに、裁判員経験者の話はほとんど表に出てこない。厳しい守秘義務のためだ。そうした背景もあって裁判員の経験者は増える一方で、ほとんど周知されず制度をスタートした09年には53・1%だった辞退率が16年には64・3%にまで上昇している。

 守秘義務は裁判員が評議の場で自由に意見を述べる環境を担保したものだが、裁判員には自己や他の裁判員・候補者の特定情報や評議の経過、裁判官・裁判員個々の意見など評議に関する全般について生涯にわたる守秘義務が生じる。

 破れば6か月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金。仕事や育児、介護に追われる社会人にとって裁判自体が負担なのに、墓場まで持っていく秘密まで背負わされるのは酷だとの意見も多い。

 強盗致傷裁判の裁判員を経験した女性は「評議で議論を尽くしたのに、あれでよかったのかと誰にも話せず、自分一人でもやもやと抱えて孤独だった。社会制度への疑問や被告の出所後の人生などを話し合っていきたいと思っても、守秘義務のおかげで(問題意識が)共有されず消えてしまうのはもったいない」と話す。

 同シンポジウムのゲストで裁判官歴40年の森野俊彦弁護士も「裁判官が家族に事件のことを何も話さないかというとそうではない。『今日こんなことがあった』と何も言えないのでは家庭生活がうまくいかない。また、同期の裁判官に参考意見を聞くのは裁判所では当たり前なのに、裁判員には一人で悩ませておくのは大問題」と指摘する。

 同会代表世話人の濱田邦夫弁護士は「発言者を特定しない方法であれば、評議内容を話しても守秘義務違反にならないよう裁判員法を改正するべき」と提言した。

 ただ、裁判員経験者へのアンケートでは96%が「やってよかった」と回答。傷害致死裁判で裁判員を務めた女性は「裁判員同士、チーム意識が芽生えて最終日には打ち上げに行ったんです。裁判長も誘ったら『(別の)送別会があるから行けないけど、参加したかった』と言ってくれた。裁判員とはLINEのグループで『あの被告、控訴しちゃったみたい』などとやりとりしています。(責任は)重かったが充実した、達成感あふれた日々だった」と振り返った。