核実験強行でバンコクの北朝鮮レストランも異変

2017年09月08日 09時00分

核実験翌日の店内。韓国人客のテーブルで接客し“南北融和”を図る北朝鮮美女

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】北朝鮮が強行した約1年ぶり6回目の核実験(3日)は、東南アジア諸国でも深刻にとらえられている。特にマレーシアでは、核実験後の日本の反応も含め詳細に報道。その背景には今年2月、クアラルンプール国際空港で起きた金正男氏暗殺がある。

「暗殺の黒幕とみられる北朝鮮に対し当初は強硬姿勢だったマレーシアも、次第にトーンダウン。北が首都・平壌のマレーシア大使館員の出国を禁じ“人質”としたからだ。彼らと引き換えに、北の容疑者たちは正男氏の遺体とともに帰国。事件は迷宮入りした」とは、アジア情勢に詳しい記者。

 また幕引きの背景にはこんな指摘もある。「マレーシアには北朝鮮関連企業が無数にあった。北の人々がビザなしで渡航できる数少ない国で、東南アジアで北が外貨を獲得する拠点になっていた。その進出の見返りに、マレーシア政財界には北からの黒い金が多額に流れていたともささやかれている」と同記者。

 現ナジブ政権はただでさえ汚職体質が問題視されている。“ヤブヘビ”を警戒し、捜査の早期終了を図ったとまで言われる。

 そんな北関連企業でよく知られているのが北朝鮮レストランだ。正男氏暗殺後マレーシアからは撤退したが、当コラム既報のタイ・バンコク店は核実験翌日も通常営業。「ただ店側はかなりピリピリしていて、本当に怖かった」と、訪れた現地在住記者は振り返る。

 外国人の多いスクンビット通りにあるだけに、客は韓国人や日本人もいるがまばら。ウエートレス兼ショー担当の美女は4人で、笑顔を見せてはいるが、目は全く笑っていない。核実験成功で祝賀ムードかと思いきや、この日は名物のショーもナシ。普段は店頭に出てこない責任者らしき人物がいて、朝鮮語で美女たちを怒鳴り飛ばしていたという。

「前に行ったときは韓国人客が写真を撮りまくっていたが、今回は一切撮影が厳禁。スマホを構えただけで警戒され、露骨に顔をしかめて逃げていく店員も」

 それでも撮っていると、美女たちに取り囲まれ、スマホを取り上げられ“尋問”されたそうだ。「タイの滞在歴、仕事や家族構成、なぜ写真を撮るのかなど、流ちょうな英語で次々と聞かれ、撮った画像データはほとんど削除させられました」

 さらに美女らはこの記者に、「今度ショーがあるときに電話するから」と見え透いた営業トークで、名刺を出すよう迫ってきたとか。「そこで『今回の核実験についてどう思うか?』と尋ねたら、鋭い口調で『ノー・アンダースタンド!(分からないよ!)』と返されました」

 ウエートレスたちがナーバスなのは、トランプ米大統領の発言にあるのかもしれない。核実験を受けトランプ大統領は「北朝鮮とビジネスする全ての国との貿易を停止することも検討している」とツイート。それが現実となれば、タイも北朝鮮より米国との関係を取り、こうしたレストランは撤退せざるを得ない。

 海外で働けるエリート層の彼女たちにとっては死活問題。北朝鮮中央の動揺は、末端にも広がっている。 

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。