飲みの席で出会った人物は詐欺師だった――。警視庁小松川署は6日までに、スマートフォンを不正に契約して販売店からだまし取ったとして、住所不定・無職の福岡徳真容疑者(30)を逮捕した。不正契約したスマホを転売し、800万円以上を得ていた疑いも持たれている。街コンで出会った相手に、スマホの購入を持ちかけていたという同容疑者。目先のわずかな金銭に釣られ、犯罪者になってしまうかもしれないだけに、酒の席でも用心が必要だ。

 逮捕容疑は1月23日、仲間と共謀して「iPhone7プラス」など最新機種のスマホなど6台を他人名義で不正に契約して、千代田区の携帯電話販売店から約68万円相当をだまし取った疑い。容疑を認め「およそ20人をだまして、100台ほど転売した」と供述しているという。仲間に3万円を手渡し、自身はスマホを買い取り業者に約44万円で転売した。小松川署はこれまでに860万円以上をだまし取ったとみて余罪を調べている。

 福岡容疑者は昨年11月に都内で開催された「街コン」で、無職の男性A(35)に「1台5000円で買い取る」と声をかけた。そのAは今年1月、別の街コン会場で女性会社員B(29)と出会い、話を持ちかけた。

 1月23日、Bは千代田区内の大手販売店「D」「S」「A」をハシゴ。各店で1~2台の「7プラス」と、「S」ではタブレットも1台買った。Bは同日中に、Aを通じて福岡容疑者に商品を渡し、AはBに3万円を支払った。

 機種の名義を変更すると伝えられていたBだが、自宅に機種代金請求が届いてだまされたことに気付いた。Aに対しての「1台につき5000円」の口約束は果たされず、無給で詐欺の片棒を担ぐことに。5月にAとBも詐欺容疑で書類送検された。

 小松川署は「使うつもりもなく転売目的で買ったら、業者をだましたことになる。自分自身が詐欺師になる」と強調する。同署はすぐに全国を点々とする福岡容疑者の足取りを追い、岐阜市内にいるところを見つけて逮捕した。

 犯罪事情通は「最近の街コンは以前と比較して下火になった。一部の開催者は出会いを本気でプロデュースする気もなく、金稼ぎのツールと考えている。出会いを求めるカモを探す結婚詐欺師はもちろんのこと、金ヅルになりそうなカモを探す詐欺師がばっこしているのが現状です」と指摘する。

 福岡容疑者は以前、携帯電話ショップの勤務経験があり、そこで詐欺のノウハウを覚えたとみられる。

 ある販売店の元店員は「電話で指示されたり、契約内容を曖昧に答える怪しい客には、使用目的を問診した後で審査を通すと言って帰していた。転売屋が逮捕されると、店にもペナルティーがあるので警戒している。ただ、売り上げの進捗によっては転売を察知しても売る店があるかもしれない。各店の音声契約とデータ契約の上限を知っていて、怪しまれないような数の台数の購入を指示していると思う」と語る。

 この事件が怖いのは、口車に乗せられたことをキッカケとして、犯罪意識が希薄なままに詐欺事件に加担してしまうことだ。今月中に「iPhone8」新発売の情報もあり、しかも10万円を超す価格とも噂されている。わずかな小遣い稼ぎに目がくらみ、犯罪者の烙印を押されてしまうことがないよう、くれぐれもご注意を――。