海上で大量に覚醒剤受け渡し 瀬取りが復活したウラ事情

2017年09月05日 10時35分

 茨城県で、船を使って密輸された覚醒剤約480キロ(末端価格307億円相当)が先月に見つかり、捜査当局が押収した事件で、最新の闇取引事情が浮かび上がった。

 国内で一度に押収された覚醒剤の量としては過去4番目だったが、警察当局は覚醒剤取締法違反容疑などで暴力団関係者や中国人ら男5人を逮捕し、背後の密輸組織を調べている。

 覚醒剤は8月22日の夜間、茨城県ひたちなか市付近の沖合で、中国と日本の漁船とみられる船2隻が接触し、海上で受け渡しをする「瀬取り」と呼ばれる方法で取引された。当局は追跡捜査し、同市の港で荷揚げされたのを確認。トラックに積み込まれた段階で覚醒剤を押収した。

 元暴力団関係者は「2000年代前半まではやったものの、徹底摘発で行われなくなった“瀬取り”が復活してきたのは、暴対法と暴排条例で資金源を締め上げられた暴力団の困窮ぶりが表れている」と指摘する。

 つい最近の覚醒剤密輸の主要手口は、覚醒剤を手荷物や体に隠して密輸する「運び屋」方式が多い。1回に末端価格数千万円から2億円。運び屋方式は実行件数が多い分、摘発数も多い。

 海外の覚醒剤を買い付ける役も、運び屋を手配する海外のコーディネーター役も、日本に密輸された覚醒剤を受け取る役も、外国の組織が手配する。最後に外国組織が暴力団に売り渡すということで、暴力団に司法の手が及ぶのを回避できるが、その分、暴力団の儲けは減る。

 一方、暴力団丸儲けの手口が瀬取り方式。1回に末端価格数百億円の莫大なカネを生み出すが、実行には高度な専門知識が必要だ。瀬取りは運搬船と引取船がGPSを使い、やりとりする。運搬船から海上に浮くように梱包した数百キロの覚醒剤を海に投下し、時間差で引取船が回収し、無人の小さな港で陸揚げする。

「巡視船に見つからないよう、引取船は夜の真っ暗闇でライトを最小限にするため、探すのには海図や風、潮の流れを熟知した人物が必要ですが、そんな能力を持つ者はごく少数。それが00年前半までに軒並み逮捕され、瀬取りは廃れた。そんな受刑者が刑期を終え、出所してきたのが近年なんです」(同)
 大金が欲しい暴力団の事情と、海のプロの出所が重なったという。