岐阜の介護老人保健施設「5人連続死傷ミステリー」

2017年08月23日 17時00分

 岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」で7月末から、高齢利用者5人が相次いで死傷している“事件”の調べが進められている。県と市が22日、介護保険法に基づき、施設に3度目(17、18日に実施)の立ち入り調査を行った。県警は事件と事故の両面から捜査を進めている。死傷した5人全員の介助に関わっていた30代の男性職員は17日付で退職。“連続殺人”の可能性について、専門家が分析した。

 死傷者は全員、意思の疎通が容易でない認知症病棟にいる高齢者。被害を受けてのことだとしても、誰にやられたのか、伝えることができない。

 そのうちの一人、91歳の女性は、肋骨骨折とあばら骨が肺に突き刺さる外傷性血気胸で入院し、のちに首と鎖骨上の皮膚にあざが見つかった。

 昨年7月、神奈川・相模原の介護施設「やまゆり園」で起きた入所者19人の殺傷事件を受け、感化された犯人が犯行に及んだことも考えられる。

 8年前には類似した事件が兵庫県の佐用共立病院で起きた。人間関係に悩んでいた当時26歳の看護師の女が「寝たきりで意思疎通できない人を狙った」として、患者6人の肋骨を折り、肺炎だった患者が後に死亡した事件だ。

 介護の現場には、言葉、表情で感情を表現できない施設利用者も多い。また、安い収入で、体力的にキツい仕事をさせられ続けるうちに、介護する側は精神を病んでいく現状があるという。

 この奇妙な連続殺傷について元警視庁刑事で、介護福祉士の資格を持つ犯罪心理学者の北芝健氏は「介護疲れした施設内部関係者に鬱屈した感情が芽生え、それが裂けて行動に移した結果」だとみている。

 外部からの侵入による犯行には否定的で「同施設の見取り図によると、鍵と出入り口のつくりから外部からの侵入はできないようになっている。施設内にいる者の犯行の可能性が高い」。

 5人が入居していた2階は、入所者の徘徊を防ぐために、職員ら以外は自由に外に出られないようになっているという。

 そして、犯人像について「非常にずる賢く、自らの犯行がばれないように、殺して精神的充足を味わっているのだろう」と北芝氏。手口として、肋骨を折るだけでは即死にはならず、後に折れたあばら骨が肺に刺さることによって、死亡する可能性があるからだ。

 目下、注目されているのが30代男性の元職員。同施設の理事長が、死傷した利用者を担当していたこの男性に仕事を休むよう勧告していたことが分かった。男性は17日付で退職しており、テレビ各局の取材に「100%やってない」と死傷との関わりを否定している。

 同施設の芳しくない噂が広まるのを恐れた関係者が、危ない予兆のある人物を見過ごしていた可能性もあるという。

 北芝氏は「たとえば、小学校で低学年のクラスを小児性愛者が担任として受け持って、犯罪を犯す事例もあります。銀行などでお金をちょろまかすような事件がちょっと出てくる。しかし、同じ職場に勤める人が、周囲の評判を気にしてそういった人間を看過してしまう。今回もそのようなことがあったかもしれない」との見方も示した。