新宿ゴールデン街放火被告に実刑判決もいまだ残る釈然としない部分

2017年07月21日 17時00分

昨年4月に発生した火災

 約300軒の飲み屋がひしめく東京・新宿のゴールデン街で昨年4月に発生した火災で、非現住建造物等放火と建造物侵入の罪に問われた無職春名弘被告(67)に20日、東京地裁(駒田秀和裁判長)は懲役3年6月(求刑懲役4年)を言い渡した。

 Tシャツに短パン姿で出廷した春名被告は、判決の読み上げ中も、人ごとのようにぼんやり宙を見つめたまま。事件の2週間前に大阪・西成から上京した被告は、サウナ泊やパチンコ代で生活保護費を使い果たし、事件当日は現場周辺で現金がないか物色していた。

「近くの神社でたばこを吸ったが、現場に向かう途中でライターを紛失した」と放火については一貫して否認してきたが、裁判長は「金目のものが見つからず腹いせで放火したと考えられる」として放火を認定した。この裁判を見続けてきたある傍聴人は「(侵入した)店は間口の狭い長屋なのに『らせん階段があった』と言ったり被告の記憶や証言が全体的にあいまいだった。調書では『店内が暗くライターで明かりをとった』と供述しながら裁判では『ライターを紛失した』と証言を変えたことで信用性が低いと判断されたのだろうが、ほかの証人も似たり寄ったりだった」と指摘する。たとえば火災現場を検証した捜査員だ。

「被告以外の外部侵入者の可能性を問われて『(侵入可能性のある経路に)固着したホコリに手や足をかけた痕跡がなかった』と証言したが、弁護人や検察から突っ込まれるうちに、ホコリは目視しただけで手で触ってもおらず成分分析もしていない雑な捜査が判明し、傍聴席からは失笑が漏れた」(同)

 さらに直前まで火元の店で改装工事をしており、たばこの不始末を疑われた作業員4人だ。

「『水の入った灰皿に吸い殻を入れた』としながらも灰皿に水が入った経緯はみんなバラバラ。吸い殻は灰皿以外からも見つかるなど信用性があるとまでは言い切れなかった」(同)

 判決が出てもなお、釈然としない部分が残る事件だった。