なぜ暴れ出した“殺人牛”

2013年01月10日 11時00分

 柔和でおいしいイメージの牛だが、鹿児島県では牛同士を喧嘩させる闘牛があり、スペインでは闘牛士と牛のバトルがあるほど、条件さえ揃えば牛は実に好戦的だ。5日、滋賀県甲賀市の牧場で男性従業員(63)が牛に襲われて死亡するいたましい事故が起きた。

 5日午後4時ごろ、男性がオス牛(2歳半=黒毛和牛)を牛舎の柱にくくりつけようとしたところ、いきなり暴れだして胸に体当たりされた。10メートル先のブロック塀に吹っ飛んだ男性に対して、牛は追い打ちをかけるようにさらに突っ込む。塀に挟まれた男性は大動脈瘤破裂で即死した。

 暴れ牛は体重約1トン。ぶつかってきたらひとたまりもない。「男性は胸がへこんでしまっていた」(甲賀署)。約50頭のメスの乳牛を飼育している牧場では、2頭の種牛となるオス牛を自由に放牧させていた。「暴れた牛はメスが搾乳する様子を見ると興奮するので、いつも搾乳前に柱にくくりつけていた」(同)。

 牛に詳しい人物は「生物学的には、妊娠しているメスにオスが欲情するということはないんですがね」と首をかしげる。人間界にも「妊婦・母乳フェチ」の男性が一部で存在する。マニアックなオス牛だったのだろうか…。

 牛が正気を失った理由について、甲賀市で乳牛を飼育する別の牧場関係者は「人になれた牛は遊び感覚で人間にドンと突いてくる。一方、牛は大きい音にも反応するので、近所で大きな音がしてビックリしたのかもしれない」と推測した。

 有名な通説に「牛は赤いものに興奮する」というものもあるが、実は「牛はヒラヒラしたものに興奮する」(前同)というのが正解のようだ。死亡した男性は黒いカーディガンを着ていた。カーディガンの前が開いてヒラヒラしていたため、牛が暴れた可能性も考えられる。

 署員が牧場に到着したときも“殺人牛”は非常に興奮して、近づけるような状態ではなかった。「牛を署に引っ張ってくるわけにもいかない」(同署)。今後は殺処分される見込みが有力だという。この牛のように、一見おとなしそうで実は危険な一面を持っている動物は多い。馬に蹴られて死亡した事例もある。昨年、米国・オレゴン州では男性(69=当時)が飼育していた300キロ以上のブタに体当たりされ、倒れたところを複数のブタに襲われて食べられる事件があった。

 名作アニメで人気のアライグマは愛くるしい見た目に反して恐ろしい。小腸に「アライグマ回虫」が寄生していることがあって、人間に感染した場合は脳に達して死に至らしめたり、発育・視力障害をもたらす。日本ではまだ報告されていないが、米国では3人の死者が出ている。

 ペットとして人気のハムスターも実は危ない。唾液が人体に入るとアナフィラキシーショック(アレルギー反応)を引き起こすこともある。2004年には埼玉の男性が手の指をかまれて死亡している。動物との付き合いは注意したい。